約120年の歴史を持ち、北米では路線総距離、年間乗客数がもっとも多いニューヨークの地下鉄。観光客も現地での移動によく利用しているが、実は現在、地下鉄を運行する地元交通局は〝ある問題〟に頭を悩ませている。
車両の屋根をサーフボードに見立て、走行中に走ったりジャンプする〝地下鉄サーフィン〟なる行為が多数報告されているからだ。
しかも、転落などによる死亡事故も後を絶たず、8月末までに少なくとも5人が死亡。ニューヨーク市は5日、地下鉄サーフィンをやめるよう呼びかける危機啓発キャンペーンを行うと発表するとともに、エリック・アダムス市長は「動画が若者たちを危険な行動へと駆り立てている」とネット上に次々とアップされる動画が事故多発の一因になっていると指摘している。
「ニューヨークの地下鉄は『第三軌条方式』といって走行用の2本のレールとは別に設けられた専用レールが電力を供給しています。日本でも東京メトロの丸ノ内線と銀座線をはじめ、大阪や名古屋の地下鉄でも複数の路線が採用しています。この方式だと架線がないですし、車両の上にも電力受給用のパンタグラフも付いていません。障害物がないことも地下鉄サーフィンがブームになった大きな要因のひとつだと思います」(鉄道専門誌編集者)
だが、地下では天井との間に人ひとりが寝そべることができる程度の空間しかない。地上区間でも道路と交差する箇所が数多くあり、死亡事故の多くは陸橋との接触、またはバランスを崩して転落し、その衝撃や列車に巻き込まれるといったケースだ。
「市当局が確認しているだけでも今年上半期に発生した地下鉄サーフィンは450件。その様子を撮影した動画は軒並みバズっています。ニューヨーク市はグーグル社などの協力を得て削除に躍起になっていますが、いたちごっことなっているのが現状です」(同)
乗客にとっては迷惑もいいところ。自由の国アメリカでもさすがにこれはアウトだったようだ。