少し前まで、大阪の復活が日本全体を再生に導くといったような楽観論があった。本格的に叫ばれはじめたのは、今年4月になってからだ。というのも、国交省がIR=統合型リゾートについて大阪府と市の整備計画を認定したから。大阪は今後、25年に大阪・関西万博、29年にはカジノ開業とビッグイベント目白押し。投下される資本や経済効果を考えても関西経済が上向かないはずがない。さらにプロ野球では阪神タイガースが優勝目前と、盛り上がる要素がてんこ盛りだ。
ところが万博はパビリオン建設の遅れで、予定通りの開催に黄色信号が点っている。すると今度は、万博会場と同じ夢洲で開業するカジノで、開業延期が決定された。
「大阪府・市は共同で広域行政を進める副首都推進本部というものを設けていますが、9月5日の会議で、29年秋頃としていた開業時期を30年秋頃と、1年先送りにしたのです。理由は『社会経済情勢等の変動等を踏まえ』としていますが、万博がどうなるか分からないというのが一番大きな理由であることは火を見るより明らか。大阪府が『万博の予定通りの開催はもうアカン』と言っているようなものです」(在阪マスコミ記者)
また、これにより1兆800億円とされていた初期投資額が1兆2700億円と、1900億円もの追加資金が必要になるという。これは開発主体のアメリカのカジノ開発・運営会社のMGMリゾーツとオリックスがまかなうので公金が投入されるわけではないと推進本部は言うのかもしれないが、初期投資が増えれば回収まで時間がかかることになり、不安材料は増す。すでに、夢洲までの延伸計画を進める鉄道会社には今回の開催延期が冷や水を浴びせる格好となっているのだ。
吉村洋文大阪府知事は「1年伸びただけ」と強気だが、かける金額が莫大なだけに、いくらカジノと言ってもイチカバチカの大博打では困る。開幕前にリーマンショックやコロナ級のパンデミックなどが、起きないとも限らない。
と、万博やIRの計画がグダグダな一方、阪神タイガースはセ・リーグ制覇に向かって着実に歩みを進めている。もし日本一になれば、85年以来の快挙だ。ここはせめてトラだけでも目標達成してほしいものだ。
(猫間滋)