星野リゾートが「ドヤ街・西成」に進出!再開発を憂う日雇い労働者の声

 日雇い労働者の街として知られる大阪・西成。治安が悪い、近寄らない方が良いと言われたのも昔の話か、西成区の新今宮駅周辺ではリゾート化に向けて開発が進んでいる。

 リゾートホテルなどの運営を手掛ける星野リゾートは2022年4月に都市観光型ホテル「星野リゾート OMO7 大阪新今宮」を西成に開業する。この星野リゾートの大阪戦略の背景には西成という街の変化がある。

 コロナ禍の前は、訪日外国人は増加傾向にあり、来阪する外国人観光客は全国でもトップレベルの数を誇った。2025年には万国博覧会の開催も予定されており、更なる観光客の増加が見込まれる。こういった状況の中、増加する関西の外国人宿泊客の受け皿となっているのが、西成である。実は西成という地域は通天閣や新世界といった大阪のシンボルとも言える観光地のすぐそばにあり、大阪の中心地である梅田や難波から電車で数分という好立地にある。

 そのため、宿泊地としての需要が高く、安い費用で旅行をするバックパッカーたちがこぞって西成の簡易宿泊所を利用するようになったのだ。それに伴い、周辺にも外国人向けの飲食店などが建ち並ぶようになり、薄暗いイメージだった西成は一大観光地として変貌を遂げつつある。そこに目をつけたのが星野リゾートだった。

 しかしながら、現在でも西成には日雇い労働者の街としての一面を持っている。「星野リゾート OMO7 大阪新今宮」の建設地から少し南に歩けばそこは「釜ヶ崎」や「あいりん地区」と呼ばれる「ドヤ街」だ。多くの日雇い労働者が1泊1000円ほどの簡易生活所で生活している。そして西成のリゾート化はドヤ街で暮らす人々にとっては死活問題にもなり得るというのだ。

「西成が観光地として人気になったら、もうこの(安い)値段では泊まれんくなるんちゃうかってのはあるね。そのうち安宿も全部高級ホテルに建て替わるかもしれない。万が一あいりん地区が梅田のようにでもなったらもう俺たちはここでは生活できないやろうね」(釜ヶ先で暮らす男性)

「最近はもう野宿できるところがほとんどなくなっている。もっと綺麗な街になったら本当に西成から追い出されてしまうのではないかという不安がある。このままの街であってほしい」(別の男性)

 開発により街から追い出されるのではないかと不安を募らせる住民たちがいる一方で、西成に住居を構える住人たちからは「綺麗に、便利になることに越したことはない」と歓迎の声も聞こえる。

 今後は新たな旅行客の獲得に取り組む一方で、かねてから貧困層の受け皿ともなっている同地域、両者が上手く共生していける街であってほしいと願う。

(浜野ふみ)

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