「大阪ダブル選挙に向け『非維新』の候補者擁立へ」。1月29日、産経新聞はこう報じている。サブタイトルにはこうある。「地元経済人らが政治団体設立」。
4月に行われる統一地方選は注目の選挙区は数多あるものの、前回の19年に「大阪都構想」の実現を掲げて争われた大阪府知事・市長のダブル選挙以来、今回もダブル選挙となる大阪はその最大のものだろう。ただそうは言っても大阪の地域政党「大阪維新の会」人気は盤石。だからどれだけ維新の牙城を崩せるかどうかだけが現実的な焦点なのだが、それでも選挙まで約3カ月というこの時期になれば、こういった動きが報じられることもある。
「圧倒的知名度と人気を誇る吉村洋文府知事はもちろん再選を目指しますが、問題は昨年の参院選で思惑通りの躍進を図れなかったことから政界引退を表明した松井一郎大阪市長の次の座です。維新の会は大阪の府と市の二重行政の解消が至上命題なので、候補者として現在は府議の横山英幸さんでこれを取りに行き、さらには過半数を占めている府議会と過半数にわずか届かない市議会も多数派を得ることを目標としていて、吉村知事は市議会で過半数を取れなければ党代表を辞めると、非常に強気な発言をしています」(在阪マスコミ記者)
ところで横山氏の候補者選出では、維新の会の中で立候補の「口外を禁止」し、元キャスターの辛坊治郎、ジャーナリストの須田慎一郎、国際政治学者の三浦瑠麗の識者3氏が選考に加わるという一風変わった党内の予備選を行ったが、あまり話題にならずに「コップの中の嵐」とスルーされた経緯がある。だが、なんとか一矢を報いたい大阪自民はもっとお寒い状況なのだった。
「1月18日に自民党幹事長の茂木敏充さんが万博会場の視察に訪れましたが、松井市長と吉村府知事が案内役として同行、夜には吉村知事と国政維新の遠藤敬国体委員長と仲良く焼き鳥屋で談話を行いました。一方、同日に自民党府連の宗清皇一衆院議員には面会の声がかからなかったことから、それを記者に問われて憮然とした表情をするといった光景が見られました」(同)
ちなみに立憲民主の岡田克也幹事長が1月20日に万博会場を訪れた際には、歯牙にもかけないということか、松井・吉村両氏は完全にスルーしている。
と、大阪自民は身内からも辱めを受けたわけだが、とりわけ府知事選は誰が出たってよほどのことがない限り吉村知事に勝てる見込みはない。だから「不戦論」さえ出てくる。それは市長選にしたところでそうは趨勢が変わるはずがなく、だから候補者の名前がとんと出てこない。
だから大阪商工会議所で副会頭を務めた西村貞一氏らが「非維新」で候補者を探しているといった冒頭のようなニュースがバリューをもって報じられることになる。
攻め所がないわけではない。大阪はコロナ対策で後手後手に回ったということもあるし、そろそろ結果が出てもおかしくないはずのIRの国の選定過程では、もともと民活で行政の支出はゼロとされていたところに、建設予定地の夢洲の液状化対策で約790億円もの巨費を投じなければいけないということになるなど、地元の反対運動が活発なこともあって延びに延びている。
だが共産党とれいわは独自候補の擁立が決まっているので、オール野党の共闘といった対抗策もない。そもそも選挙では陣頭指揮に当たらねばならない中央政党の幹事長がもともと弱体の大阪自民に興味がなく、それよりも「ポスト岸田」を考えたときに、今後の国政運営や選挙で協力を得られるかもしれない維新とのパイプ作りに熱心というのだから、ただただ途方に暮れるしかないのかもしれない。
(猫間滋)