大山倍達「牛殺し伝説の遺品」が1000万円で売られていた(2)法廷闘争とトランクス

 その一方で、今回の展示販売が波紋を呼んでいるという。格闘技ライターが打ち明ける。

「大山総裁が命がけでつかみ取った角が売られることに抵抗を覚える人も中にはいるかもしれません。東京・池袋に総本部があった時には、入り口付近のショーケースに飾られていました。いわば極真の魂がこもった遺品。いったいどこから流出したのか。どんなボンボンに買われるのか。気が気ではありません」

 角の「流出騒動」に加えて指摘されるのが、対猛牛仕様のトランクスの「所有権問題」だ。

「かつて大山総裁から教えを受けた人物が、道場の大掃除をした際に譲り受けたと主張しているとか」(格闘技ライター)

 にわかに発覚した遺品トラブル。真相を探ると、意外な事実が明らかになった。事情を知る極真会館関係者が言う。

「牛の角もトランクスも、下手をしたらゴミとして処理されていてもおかしくなかったのです」

 いったいどういうことか。関係者は続ける。

「極真会館が正式に発足した64年、大山総裁が池袋に建てたのが地上5階、地下1階の総本部ビル。2階の本道場では名のある高弟たちが『100人組手』を行ってきた、いわば聖地です。94年に総裁が亡くなってからは遺族が管理してきましたが、諸事情により20年に売却する運びとなりました。とはいえ、ビル内には総裁ゆかりの品々がたくさん眠っていましたからね。多くの弟子が気にかけていました」

 ビルの登記情報を見ると、確かに20年に「差押」という形で所有権が遺族から民間会社と東京都に移っていた。先の遺品は、この総本部ビルから〝救出〟されたものだというのだ。

「牛殺しのトランクスも総本部の物置部屋で埃をかぶっていたんじゃないですか? というのも、極真会館では78年から機関誌『月刊パワー空手』を発行していて、トランクスはある人物から編集部に寄贈されたと聞いています。総裁の死後、『遺言書』(※のちに最高裁で無効と判断)によって後継者に指名された松井章圭氏と、未亡人の智弥子氏を推す遺族派が対立。法廷闘争を繰り広げた結果、極真会館の商標や出版部門などの事業は遺族派が受け継ぐことになりました。つまり、トランクスの所有権は遺族側にあったことになります」(関係者)

 大山総裁が猛牛と対峙した際に着用したトランクスは、紆余曲折を経て、ようやく牛の角と一揃いになって収まったというわけか。

*「週刊アサヒ芸能」9月14日号掲載

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