大山倍達「牛殺し伝説の遺品」が1000万円で売られていた(3)「いい度胸してんな」と言われ

 真相を確かめるべく「闘道館」を訪ねた。入り口付近のガラスケースには、ホームページにあったように、牛の角とトランクス、その他ゆかりの品が陳列されていた。泉高志館長に話を聞くと、

「もちろん、諸々の問題はクリアにしたうえで、展示販売させていただいております。ご遺族の方から協力をお願いされた経緯もあり、きちんと書面を交わして譲り受けたものです」

 なお、泉館長は人気番組「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系)で格闘技グッズを担当するプロの鑑定人でもある。今回の展示販売に際しても、当時の記録映像などを検証し、現物のサイズや角の断面と照らし合わせるなど、綿密な調査をしたうえで「本物」と断定するにいたったという。

「もしも番組で鑑定したら、1000万円以上の値をつけていたでしょう。購入者の方に条件や注文をつけることはありませんが、これだけの金額を払って購入する方は、きっと愛情を持って大切に保管していただけると信じております。また、空手着ではなく、なぜトランクスで牛に挑んだのかというのも大切なポイントで、大山総裁は古代ローマのコロッセオに立つ戦士をイメージし、〝人類代表〟として素手で立ち向かったのではないか。ならば、やはり角とトランクスは分散すべきではない。そんな思いもあって、一式での販売とさせていただいております」(泉館長)

 Leo氏も1000万円という売り値について、こんな見解を述べる。

「個人的には安いと思っています。強さというのは相対的なもので、例えば力道山に勝利したとしても『世界最強』を証明できるものではありません。しかし『一撃で牛を殺した』、『角を折った』という超人的な記録は、100年経っても語り継がれる。仮にサザビーズなどの世界的なオークションに出品すれば、とんでもない値がつく可能性があります」

 他方、大山総裁の遺品販売をめぐって批判が上がっていることについて、泉館長はこう答える。

「ある関係者の方から言われました。『総裁の遺品に値段をつけるなんていい度胸してんな』と。しかし、来年で大山総裁が亡くなって30年になります。宗家、もしくはしかるべき施設で管理していくのもひとつの理想だとは思いますが、100年、200年と続けていくのは実際には難しい。ならば歴史を理解している志あるファン個々人がお宝を継承していくことこそが、現実的で有効な保存方法なのです」

 なお、展示販売を始めたのは今年6月4日。この日は大山総裁の誕生日で、「生誕100年」にあたる。

「闘道館では、これまで力道山をはじめ数多の格闘技史に残るお宝商品を扱ってきましたが、高額なお宝であればあるほど、購入された方々からは、『自分の責任でこのお宝を次世代に届けるんだ』という決意を感じることが多いです」(泉館長)

 我こそは歴史の継承者にならん! という御仁は、ぜひとも「闘道館」で実物を見てほしい。

*「週刊アサヒ芸能」9月14日号掲載

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