佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」人は二度死ぬ。「二度目の死」を先延ばしにするためには

 毎日暑いです。お疲れ様です。もうお盆ですね。去ってしまった親族の供養をする。仏壇や墓の前で手を合わせて亡くなった人を心に迎える。不思議なもので、今でも死んだ両親がそばにいるような気がすることがある。母親に叱られたり、誉められたりした幼い時の気持ちが、フッと心に宿ることがある。若くして死んだ友達、同級生、世話になった人、去ってしまった人々を思い出すことも少なくない。

「人は二度死ぬ」といいます。二度目の死とは、自分のことを覚えている人が誰もいなくなった、思い出してもらえなくなった時が二回目の死だという。

 私は死んだ両親のことを思い出す時に残念に思うことがある。それは、親の若い頃のこと。どんな人生を歩んだのか、ほとんど知らないのだ。両親のことを知らないのだから祖父母のことはもっと知らない。それがちょっと寂しい。生きているうちにいろんなことを聞いておけばよかったと思う。しかし、なかなか聞けるもんでもない。

 少し想像してもらいたい。子供や孫、仲よくしている人たちが、ほとんど自分のことを知らないというのは寂しくないだろうか?

 葬式にかける費用は諸々合わせて平均208万円(葬式に関する全国調査2020年)。ところが、コロナ禍で家族葬などの小さな葬式や、一日葬という通夜と告別式を分けずに一度に行ってしまうものも増えてきた。

 葬式の費用は減っていくばかり。30年くらい前までは、大きな花輪が亡くなった人の家の前にいくつも並び、多くの人がやって来たものだが、そういう葬式の時代は過去のものだろう。

 葬式は小さいもので構わないが、二度目の死は少しでも先に延ばしたい。そのためには、自分の人生や考えなどをまとめた本を自費出版で出すのがいいと思う。子供や学生時代の思い出、初恋、就職、仕事のこと、楽しかったことや悲しかったこと。そして何より家族のこと。そんな内容をまとめるのだ。

 自分で書くのもいいが、大抵は挫折する。本にするためには最低でも原稿用紙250枚以上の文章が必要で、読んでもらうためには、それなりの技術がいるものだ。

 なので、プロのライターに色々と話して、下地の文章を作ってもらい、そこに本人が修正を入れる方法がいいと思う。写真も何枚か入れた本を作っておくと、家族や親戚、何よりも子供や孫が読んでくれる。葬式などに来てくれた人の香典返しに渡してもらうのもいいのではないか?

 こう書くと「俺の人生なんか普通すぎて、つまらんよ」と思われる方がいるかもしれないが、決してそんなことはない。武将や政治家や有名人の人生だけがおもしろいと考えるのは大きな間違いだ。

 エジプトのピラミッドの近くから発掘される古代のパピルス(記録)に、当時の職人たちの勤務記録があって研究者が夢中になっている。当時の人たちの生活がどんなものかを想像するのにどれだけ苦労しているか。いや、つい100年ほど前の人たちの生活のことでさえも、浮世絵や当時の文学で垣間見られるだけで、想像の範疇を超えない。普通の人の人生は謎なのだ。

 つまり、読み物としてそこそこのものであれば、あなたの人生は、100年後、200年後には、子孫だけでなく、一般的にも読んでもらえるかもしれないのだ。

 費用は200万円もあれば足りるはず。もしも「佐藤、お前が俺の人生の文章を作ってくれ」という人がいたら、もちろん書いてみたい。会社員、農家、漁業、教師、村の小さな商店を守った人、職人さんの人生をじっくり聞いてみたいと思うからだ。

 その時は、徳間書店に自費出版で本を作ってもらおうか(笑)。ではまた次回。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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