東の「てんや」が大阪進出、迎え撃つ「さん天」と天ぷら大坂夏の陣!

 天丼チェーンの運営は難しいようだ。「かつや」を運営するアークランドサービスの「天丼あきば」は16年に閉店(同社には「天丼はま田」6店舗がある)、セブン&アイHDの「満天丼」は19年に閉店、あの「松屋」の松屋フーズも「、松(てんまつ)」を19年に閉店させている。

 そんな“天丼業界”で唯一、全国でのチェーン展開に成功しているのが、ロイヤルHDの「てんや」だ。東京の74店舗を中心に、最西端の広島と愛媛を含め国内146店舗を展開。しかもタイやフィリピンなど、海外でも34店舗を展開している。

 さて、そのてんやも大阪には不在だった。かつては3店舗あったが、21年2月までに全て撤退。時期的にコロナ禍で苦戦を強いられたことが察せられるが、そのコロナも2類から5類感染症へ移行、普通の病気になって街が人で溢れるようになったことで捲土重来、8月7日に再び難波千日前に出店を果たした。そこで勃発したのが、迎え撃つ地元チェーンとの間で争われる「天丼戦争 大坂夏の陣」である。

「関西では『和食さと』などを展開するサトフードサービスが、天丼チェーン『さん天』を関西ローカルではありますが、大阪の19店舗を中心に、近隣の府県で29店舗展開しています。つまり、関西に陣を張るさん天の牙城に1位のてんやが殴り込みをかけたというわけですから、どうしたってその趨勢に注目が集まってしまいます」(フードラーター)

 天丼業界の2強の争い、かつ、てんやはこれを機に西日本での積極展開を睨んでいるとされ、そのまま全国地図の塗り替えにかかってくるかもしれない。

 だがこの2つ、同じ天丼チェーンでもメニューや価格はかなり異なる。

「まずはスタンダードな天丼だと、てんやは560円、さん天は430円。値段だけ見るとだいぶ異なりますが、天ぷらのタネがさん天の場合は野菜が多めで、てんやでは味噌汁付きなので一概に比べられません。いわゆる“豪華盛り”だと、てんやの『オールスター天丼』720円(海老・いか・ほたて・まいたけ・れんこん・いんげん)に対し、さん天は『グランドスラム天丼』750円(海老・鶏天・たまご・ちくわ・いか・野菜4個)となっている。天ぷら定食も同様で、てんや760円(海老・いか・きす:かぼちゃ・いんげん)、さん天は580円(海老・アジ天・野菜3個・のり)で、やはりさん天が安い分、てんやはごはんのおかわり自由が付いてきます」(同)

 付加価値のてんや、コスパならさん天と言えようが、後者はいかにも関西ぽい設定のようでもある。

 実は、さん天もかつて埼玉に5店舗出店していたが、今年2月までに店を閉めた経緯がある。だから今回のてんやの大阪進出は、さん天の東征が失敗、あるいはてんやが迎え撃って、コロナ禍が去って機が熟したところで、てんやが一度は挫折した全国統一の道を再び歩み始めた——という図式にも見える。

 さて、大阪人はどちらを選択するだろうか。 
 
(猫間滋)

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