ソ連崩壊再び?「ロシア敗戦後」の分離・独立を専門家が予測

 依然として停戦の糸口が見えないウクライナ戦争。だが、仮にロシアが敗戦、またはそれに近い形での終戦となればプーチン大統領の失脚は免れない。そうなった場合、かつてのソ連崩壊のようにロシア崩壊を招き、多くの国家が分離・独立する恐れがあるという。

「あくまでシナリオのひとつですが、現在のロシアは21の共和国、195民族から構成される連邦国家。法律上、独立するのはソ連時代よりも難しくなっているとはいえ、このまま政府の求心力が低下すれば見切りを付ける共和国や民族が出てくると思います」(大手紙元ロシア特派員)

 モスクワから東に800㎞ほどの場所に位置するタタールスタン共和国は、最終的には撤回したがソ連崩壊時に一度は独立を宣言。世界有数のガス田を有し、戦争後はタタール人の間で独立を求める声が高まっている。

 また、そのタタールスタン共和国に隣接するバシコルトスタン共和国も地下資源に恵まれている。主要民族であるバシキール人を中心に独立志向が高いと言われ、ウクライナ側の義勇兵として身を投じる若者も多い。

「他にもカスピ海に面したダゲスタン共和国やウラル山脈の北西部にあるコミ共和国、モンゴルと国境を接するトゥヴァ共和国、日本の8.2倍の広大な面積を持つ東シベリアのサハ共和国もロシアの体制が揺らぐようなことがあった場合、独立する可能性があると欧米の情報機関なども指摘しています」(同)

 さらに意外に思われるかもしれないが、プーチン大統領に忠誠を誓うカディロフ氏が首長を務めるチェチェン共和国も独立すると予測する専門家も少なくない。

「彼の忠誠の対象は、大国ロシアと強いプーチン大統領。それが崩れた場合、真っ先に裏切る場合も考えられます。それに、チェチェンは00年代まで独立紛争が起きていた地域で、今また独立派勢力が息を吹き返しつつあります。つまり、ガディロフ首長の進退に関係なく独立の可能性は高いということです」(同)

 ちなみにロシア政府から〝望ましくない団体〟に指定された「ロシア後の自由な民族フォーラム」の創設者オレグ・マガレツキー氏は「41カ国に分裂」と大胆予測。だが、ここまで国が乱立することになれば、国境線や資源などを巡って分離国同士で新たな戦争なんて展開もありうる話だという。

「現在、紛争状態にある中央アジアのアゼルバイジャンとアルメニアもソ連からの独立国。90年のユーゴ紛争のような状態に陥ることもゼロではなく、なかったとしても極東を含むシベリア地域では分離・独立の混乱に乗じて中国が介入してくるはずです」(同)

 ロシア解体には世界情勢のさらなる混乱というリスクがあるようだ。

※画像は独立の噂が絶えない東シベリアのサハ共和国

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