土下座像から巨大婆像まで155像を網羅、「慰安婦像大図鑑」はなぜ作られた?

「慰安婦像大図鑑」(日野健志郎/パブリブ)という衝撃的な新刊が発売された。韓国全土に建てられている“慰安婦像”のほぼ全て(155像)の写真と解説が載っている本だ。そもそも慰安婦像が155像もあるとは知らなかったし、本になるほど様々なバラエティーがあるのにも驚いた。
 
 ライターの日野健志郎さんに、そもそもなぜ慰安婦像を撮り始めたのかを伺った。

「もともと韓国旅行が好きだったんです。ただ、今の若い子が韓国を回るようなキラキラした旅ではなく、韓国の変な部分、歪な部分を見るのが好きでした」

 日野さんはかなりの頻度で韓国に渡航し、廃墟やタルトンネと呼ばれるスラム街を回った。旅をしているうちにいつの間にか、ハングル語を覚えてしまったほどだ。

「2018年に写真集を出したいと思って出版社の編集者に相談したんですけど、ちょっといきなり韓国のスラムの写真集はハードルが高いと言われました。その代わりに、当時たびたびニュースで話題になっていた慰安婦像が面白いのでは? という話になりました。そもそも以前に勤めていた出版社の雑誌で廃墟の連載を担当するなど、昔から変な物フリークで、検討してみることにしました」

 当時すでに100体を超える慰安婦像が建てられ、なお増加していた。ソウル市内には15体が建っていたのでとりあえず回ってみた。

「有名な日本大使館前に建てられた、女性が椅子に座っているスタイルの慰安婦像しかないと思っていたのですが、実際には様々なバリエーションがありました」

 本書をめくると色々な慰安婦像を見ることができる。背中から蝶が生えた像、髪の毛がだまし絵になっている像、手から蝶の大群が飛び立っている像……などなど。さらに像は少女とは限らず、現在のおばあさんの像もある。中でも一糸まとわぬ巨大なおばあさん像はものすごい迫力があった。もちろん定番の像も多いのだが、市井の人によって様々な服が着せられていて個性を感じさせる。

「もうすぐ撮り終わると思った2020年、コロナになってしまいました。すでに8割は撮り終わっていたので、もう本にしようと思ったのですが……」

 そんな折、「安倍総理が土下座をしている少女像が建てられた」(制作者は、土下座している男は安倍総理ではないと弁明した)という日野さんにとっては聞き流せないニュースが流れた。

「その像だけは絶対に観たいと思ってコロナがおさまるのを待ちました。コロナが終わるとすぐに韓国に渡り、レンタカーを運転して土下座像と残りの像を全部写真に収めました」

 日野さんの努力の甲斐あって、韓国内にあるほぼ全ての慰安婦像が収録された本が爆誕した。少しでも興味がわいた人は是非、読んでみてはいかがだろうか?

(村田らむ)

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