佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」11時30分~15時は休憩「シエスタ」が日本に必要なワケ

 6月に入って真夏日も増えてきた。毎日のお仕事、ご苦労様です。病院で入院中の人もいるでしょう。お疲れ様です。

 世界中の気候がジワリとおかしくなってきています。昭和の夏はもっと優しかった。真夏でも35度になるのは珍しかったし、東南アジアのスコールのようなゲリラ豪雨もほとんどなかった。

 今年も猛暑日が続くのだろう。もちろん、そんな日にも仕事はある。私のような、屋内で働く人は冷房を上手に使って熱中症にならないようにすればいいけど、農林漁業や建築や工事の現場、配達など営業車のプロドライバーも、車内のクーラーはほぼ効かない。

 エコなのかもしれないけれど、この酷暑の中、自転車で配達する人がどれだけいるか。警察官や自衛官、警備員。また、廃品回収、外回りの営業マン、室内でも飲食業の調理場なども現場は猛暑だ。人の働く環境ではない。

 そんな時に思い出すのがイタリア、スペインなどヨーロッパのシエスタだ。日中に数時間の長めの休息を取る。昼寝する人もいるし、のんびり涼んでいる人もいる。今の猛暑が続く日本の夏も、うまく取り入れたらどうかと思うのだ。

 7月から9月までの3カ月は、午前11時30分から午後3時くらいまで、屋外の冷房の効かない職場では不要不急の仕事はしてはいけないと国の制度で決めてしまえばいいと思っている。その代わり、早朝や夜遅くの仕事や作業を認める。夜10時くらいまでは多少の騒音は国民の総意として容認する。つまり、工事の音がうるさいなどと言わないことだ。

 休憩時間はファミレスや木陰でのんびりしたり、パチンコやスロットをする時間に充ててもいい。商店街などは空き店舗などを昼寝用スペースとして利用してもらえば、喜ぶ人も多いだろう。午前中の仕事の疲れを取って、暑さのピークが過ぎてから働けば、仕事の効率も上がるはずだ。

 そんなことできるわけないと思う方もいるだろう。しかし、実はシエスタ制度を取り入れている会社が日本にも出てきている。それも冷房の効く屋内での仕事をする会社だ。昼寝スペースで仮眠ができるようにした会社もあり、昼寝で脳もリフレッシュして作業効率が上がるという。ただただ頑張って机に向かっているだけでは、仕事ははかどらないものだ。

 また、欧米の多くが取り入れているサマータイム制度を日本でも取り入れようという動きもあった。夏は時計を1時間早く進めて、朝の涼しいうちから仕事をすれば効率がいいというわけだ。しかし、それでは、昼間のいちばん暑い時間はそのまま残る。気温35度以上の酷暑の中、外で働くのは人間の体にとって負担が大きすぎる。もはや根性論では済まされない。気候が変化したのだから、働き方もそれに合わせて柔軟に変わってほしいと思う。

 毎年この季節になると、地元のディスカウント店で缶コーヒーを箱買いする。そして冷蔵庫に冷やしておいて、配達、集金、作業などでやって来る人に「暑い中ご苦労様です」と、ひと声かけて渡すことにしている。皆、喜んでくれる。

 多くの声援を集めるアスリートや成功した経営者、有名人、エリート会社員ばかりが注目されるが、この猛暑の中で働いてくれている名もなき多くの人々が日本の経済とシステムを支えてくれている。そんな人へ感謝の気持ちをちょっとした形、冷えた缶コーヒーに託して渡すのだ。

 私は、そういう人たちこそ、本当のヒーロー、偉い人だと思っている。しかしヒーローも、この猛暑の中で働き続けるのは限界を超えている。マジメに働く人ほど倒れてしまう。シエスタの制度を作ってほしいが、それまでは自分の体調と相談して、上手にちょこっとサボることもしてほしい。自分を守ることは、自分と家族と仲間のためにも大切なはずだからだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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