飲み代700万円はカラダで…ピンク浴場の“一斉摘発”を招いた強欲ホストの罪

 警視庁と各県警の合同捜査によって、1都6県にわたるピンク店の大規模摘発が行われたのは今年1月のこと。店舗の経営者や従業員が逮捕されたが、それらの店には、とある共通点が…。お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火が東京地裁前からリポートする。

 2023年1月下旬、日本中のいくつかの特殊ピンク浴場が一斉摘発を受けました。ニュースにはなっていないので一般的にはあまり知られていない事実ですが、その手のお店をよく利用する人達がSNSで大騒ぎするほどの衝撃だったようです。
 
 いったい何があったのか? その大元とも言える事件の初公判が4月28日、東京地裁で行われました。

 罪名は「売防法」違反と職業安定法違反。被告人は元ホストの男性(27)。起訴されたのは、被告人が勤めているホストクラブの飲み代の代金700万円を返済するという誓約書を被害女性(24)に書かせ、「スカウトマンに紹介してソープで働いてもらうから」と脅して東京都内の特殊ピンク浴場で遊客相手にカラダを売らせて、それで得た2万円を被告人が受け取った件。そして、店内で“売り行為”が行われていると知りながら特殊ピンク浴場の面接に行かせた件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は2020年10月にチャットで被害女性と知り合い「同棲したい」と福島県から上京させて交際することになったという。しかし2人が会う場所は被告人が勤めるホストクラブ店内のみ。被害女性が自分に惚れていると分かった被告人は、売り上げを伸ばしたいと伝えてデリバリー型のピンク店で働かせ、お店で会う回数を増やしていったという。

 さらにその年の年末には大きなイベントがあって売り上げが必要だと伝え、被害女性には消費者金融から300万円の借金をさせ、2021年10月には起訴状通りの誓約書を書かせてソープで働かせるようになったらしい。

 取り調べに対して被害女性は「被告人に嫌われるのが怖くて冷静になれなかった」と述べているそうです。
 
 そして、被告人が2021年10月から2022年2月までにスカウトを通じて被害女性を働かせたお店というのが、東京都内2店舗・福島県・愛媛県・大分県・熊本県・沖縄県のソープ7店舗。それで被告人が逮捕されたと同時に7店舗が一斉に捜査されたというわけです。短期間でいろんな場所で働かされていたようですが、この摘発によってお店を畳んだところもあるようです。

 ちなみに被告人は取り調べに対し「本命の彼女と一緒に住んでいて、被害女性とはホストと客の関係で恋愛感情はなかった。好きになってくれていたのでエース(最もお金を払ってくれる客)になってくれると思った」と供述しているそうです。この供述を聞いただけでも被告人の強欲さがうかがえますね。

 初公判はここまでの証拠を検察官が朗読しただけで閉廷となり、続きは5月24日に行われることとなりました。次回は被告人の彼女の証人尋問と被告人質問が予定されています。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。

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