プーチンを悩ませる「新任大使17人のガン無視」と反政権テロ組織の「爆破攻撃」

 モスクワで行われた外国大使の「信任状奉呈式」に出席したロシアのプーチン大統領。ところが、集まった米大使を含む17人の大使を前に、こんな演説をぶった。

「(2014年の)ウクライナのクーデターをアメリカが支援したから、現在のウクライナ危機が起こったのです」

 この発言が響いたのか、通常なら演説後に大使たちから拍手されるのが恒例にもかかわらず、今回はいっさいなし。プーチン氏は、大使たちのこの「無言の抵抗」に動揺を隠せず、慌てた様子で、

「み、みなさん、みなさん、これで終了ですよ」

 などと言うのである。だが、時すでに遅し。こうした「総スカン映像」がSNSで世界に配信されることになってしまったのだ。ロシア問題に詳しいジャーナリストが語る。

「信任状奉呈式というのは、新たに着任した大使を迎える定例行事ですが、演説の後に拍手する決まりはありません。ただ、2022年のセレモニーでは、スピーチ後に拍手が起こっており、おそらくプーチン氏としては、今回も当然拍手が起こるだろうと思っていたはずです。その証拠にプーチン氏は演説後、拍手を促すような表情で新任大使らに目をやるんです。が、彼らはまったく反応しなかった。そんな映像が全世界へ流されてしまったわけですから、プーチン氏としても頭が痛いでしょうね」

 しかも、そんなプーチン氏をさらに悩ませる火種があるという。国内で起こっているテロ事件だ。

「4月2日にロシアのサンクトペテルブルクのカフェで発生した爆破事件で、ロシアのウクライナ侵攻を支持していた著名な軍事ブロガーが死亡しました。この一件について『国民共和国軍』(NRA)を名乗る反プーチン政権組織が犯行声明を出したんです。この事件では、すでに26歳のロシア人の女が拘束されていますが、ロシア当局は『ウクライナの情報機関が計画したテロ行為だ』としていました。ところがNRAは、事件とウクライナの情報機関とは無関係で『(NRAは)外国の組織や情報機関の支援は受けていない』と主張。つまりロシア国内に問題があると宣言されてしまった形なんです」(前出・ジャーナリスト)

 NRAと聞いて思い出すのが、昨年、モスクワの高速道路で起こった自動車爆破事件だ。この事件では、「プーチンの脳」と呼ばれる極右思想家で政治活動家のアレクサンドル・ドゥーギン氏の娘でジャーナリストのダリアさんが死亡している。

「ダリアさんはドゥーギン氏とともに集会に出席し、その帰り道に高速道路を走行中、車に仕掛けられた爆弾により死亡しました。ドゥーギン氏はたまたま別の車に乗っていたため助かったと言われます。この時も、様々な犯行説が流れる中でNRAが犯行声明を出し、ドゥーギン氏親子を標的にし、結果的に娘を殺害したと主張しました。今回のカフェ爆発事件もあり、プーチン氏としては、対ウクライナ問題だけでなく、国内のテロリスト対策にも細心の注意を払わなければならなくなったわけです」(前出・ジャーナリスト)

 セレモニーでのガン無視による赤っ恥に加え、反対派によるテロとの戦い。さらには一向に見えない戦争の行方もあり、プーチン氏にとっては苦難の日々が続きそうだ。

(灯倫太郎)

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