今年2月、米サウスカロライナ州沖で米軍機によって撃墜された気球について、「民間の気象研究用が迷い込んだ」と念仏のように主張を繰り返してきた中国。ところが3日、米NBCニュースは米政府高官らの話として、この気球が複数の米軍基地の上空を8の字を描くなどして往来し、兵器システムの電子信号や兵員間の通信を傍受。リアルタイムで中国に送信していたと報道したのだ。
それが事実なら、この気球が「スパイ活動目的」であることに疑いの余地はなく、中国側の主張が完全に覆されることになる。
「気球の全長は約60メートルで、重さは1トン超。残骸を分析した結果、速度変更や方向転換に必要なプロペラや舵が装着され、通信傍受や位置特定などが可能な特殊アンテナが装備されていたそうです。ただ、米国防総省のサブリナ・シン副報道官は3日、情報がリアルタイムで中国側に送られていた可能性については『現時点で確認できない』としながら、『(当時)我々は対策を講じ、気球が収集できる情報を制限した』と強調。つまり、米軍側は早い段階で気球が機密情報を傍受していたことを把握し、対抗措置を講じていたというのです。気球には自爆装置も備わり、遠隔操作も可能だったとのことですが、故障か意図的かそれが作動しなかった。米軍ではその点についても大きな関心を持ち、分析中だとしています」(全国紙記者)
専門家によれば、気球で収集できる情報は、通過地域の上空を通る人工衛星には劣るものの、気球でしかできない情報収集方法もあり、それが行われていた可能性は否定できないという。
「米国防省の情報機関は昨年の時点で、すでに中国軍が世界中で運用しているスパイ気球の追跡手法を開発しており、今回も早い段階で気球の航路を把握していたといいます。おそらくは、重要地域の防護はあらかじめ行っていたはず。今回の気球に関し、米連邦捜査局(FBI)が調査を行い、すでに気球のソフトウェアに使われたアルゴリズムや設計方法などについての情報を入手しているといいますから、もはや丸裸も同然。中国側が抗弁しようが、言い逃れが出来るレベルではないと思われます」(同)
今回も中国外務省は「偶発的な事件を歪曲して政治利用することに断固反対する」と主張。相変わらず「民間の気象研究用が迷い込んだ」と4日の会見で繰り返していたが、
「来月には広島でG7サミット(先進7カ国首脳会議)が開催されます。米国が議長国の日本に対し、この問題を議題に上げるよう強く求める可能性が出てきました。
ともすれば、岸田政権の明暗を分けるかもしれないスパイ気球問題。岸田氏の手腕に期待がかかる。
(灯倫太郎)