ロシアで「残虐ワグネルグッズ」が大ブーム プーチンはワグネル創設者の排除を加速

 3月20日から22日までモスクワを訪問していた中国の習近平主席は、出迎えたプーチン大統領に対し、「私の今回のロシア訪問は、友誼の旅、協力の旅、和平の旅だ」として、両国の関係強化を再確認したと伝えられる。

 そんな中、いまロシア国内では、一時は戦場で大きな功績をあげ、軍部にも絶大な発言力を持っていた民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏を排除する動きが加速しているというのだ。

「英BBCによれば、今月に入りプーチン大統領は『エネルギー施設の安全確保』を名目に、国営ガス会社『ガスプロム』系列で新たな会社を立ち上げたのですが、実はこの会社が、前線に志願兵を投入する官製軍事会社だというのです。周知のとおりプリゴジン氏は、ロシア中の刑務所で囚人をスカウトし戦場に送ってきたことで、当初は勝利に大きく貢献してきました。しかし、戦果を巡りショイグ国防相らと対立、さらに政治的野心も示すようになってきたことで、プーチン氏としても目障りな存在となってきた。また、最大4万5000人いたとされるワグネル戦闘員も、直近では7000人程度まで減少したと伝えられます。そこで、政府は新たに統制の利く官製軍事会社を設立し、ワグネルより手厚い待遇をエサにして志願兵を集め、戦場へ送ることを考えているというのです」(ロシアウォッチャー)

 つまり、新会社設立の目的は、プリゴジン氏率いるワグネルを前線から排除し、主導権を国防省の主流派に戻すことにあるというのだ。

 ところが、そんな動きがある一方で、ロシア国内ではワグネル人気が上昇。関連グッズが飛ぶように売れているという。

「英テレグラフ紙によれば、近年、モスクワ市内のショップやSNSなどで、ワグネルのロゴが刻まれたキーホルダーやTシャツ、マグカップなどの関連商品が販売され、ちょっとしたブームになっているというんです。中でも人気なのが、ワグネルグループを象徴する骸骨ロゴが刻まれたヘッドに、木製の持ち手を付けた重さ7キロの大型ハンマー。これは昨年11月、ワグネルグループの兵士からウクライナ軍に転向したロシア人男性がハンマーで処刑される姿を撮影、SNSにアップされた『復讐のハンマー』を模して製作されたもの。かつてワグネルは、ロシアのテロ支援国指定に賛成した欧州議会議員宛に、血糊をつけたハンマーを入れたバイオリンケースを送りつけたこともあり、いわばハンマーは彼らの残虐さを表す象徴なのです」(同)

 実際、テレグラフには、ワグネルのハンマーを持って微笑む一部政治家のほか、ワグネルグループの訓練センターで戦闘訓練を受けたとして、その模様をSNSにアップする若者も少なくない。

「ロシアの世論調査機関ロシアンフィールドが先月初めに実施した全国世論調査によると、回答者の4割が今回の戦争でプリゴジン氏が大きな役割を担ったと答えています。つまり、いいか悪いかは別として同氏が今、ロシア国内で最も人気がある指導者の1人だということは間違いありません」(同)

 映画の世界ならともかく、現実世界でダーティーヒーローに支持が集まるとは、言葉を失うばかりだ。

(灯倫太郎)

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