ウクライナ侵攻から1年を前に、ウクライナのキーウを電撃訪問したバイデン米大統領。実はこの日、ウクライナの隣国のベラルーシでも大きな動きがあった。ルカシェンコ大統領が、最大15万人規模の「地域民防衛軍」の創設を指示したのだ。
「この発言は、国家安保会議に出席したルカシェンコ氏の口から飛び出したもので、同氏は『侵略行為がある場合、迅速かつ苛酷で、適切に対応する』として、今後起こりうる事態に備え、男女問わず全ての国民が兵器の取り扱いを訓練し、有事の際には家族と自宅、国家を守るべく地域で“自衛”に取り組むよう指示を出したというもの。この日は隣国ウクライナをバイデン氏が電撃訪問したことで報道が過熱しており、さらに翌21日はロシアのプーチン大統領が年次教書演説をするとあって、ベラルーシ国民の間にも緊張が走ったようです」(全国紙記者)
ところが、その緊張に追い打ちをかけるような衝撃情報がロシア周辺国を駆け抜けた。それが、「プーチン氏が7年以内にベラルーシを吸収する」とされる、ロシア内部の秘密文書を暴露するニュースだったのだ。ロシア情勢に詳しいジャーナリストが解説する。
「機密文書は『ロシアのベラルーシでの戦略的目標』というタイトルがついた17ページに及ぶもので、キーウインデペンデントやドイツ日刊紙ジュートドイチェ・ツァイトゥングなどで構成する、国際調査報道ジャーナリスト連合が入手したものだとか。報道によれば、この文書は、2021年にプーチン大統領直属の対外協力局が作成したと推測され、骨子には、2030年までにベラルーシの政治・経済・軍事をロシアが統合すると明記。統合分野を政治と軍事部門、経済部門、文化部門の3つに分類し、その時期も短期(2022年)・中期(2025年)・長期(2030年)と具体的なスケジュール目標もあることから、信憑性の高さが伺えます」
実は、同盟国であるロシアとベラルーシは、99年に「連合国家創設条約」を結び、両国の段階的な統合について合意している。だが、それが政治や軍事、さらに文化にまで及ぶとなると、話は急展開だ。
「機密文書では、22年までに合同軍事演習を強化、25年までにベラルーシ内のロシア軍駐留を拡大、いずれは合同司令部を創設して指揮体系をロシアが握ることになるといいます。そうなれば、ベラルーシの外交・国防政策、国境統制も同時にロシア管轄になる。つまり、ロシアがまるまるベラルーシを飲みこみ、ロシアの一部になるということです。仮にこれが実現すれば、むろん国境を接するNATO加盟国への脅威が高まり、NATOも黙っているはずがない。大規模で直接的な対決の可能性も高まります。現在、ベラルーシは参戦こそしていないものの、ロシア軍との合同演習に加え、ベラルーシ内にロシアの兵器を配備するなど、文書が掲げる22年度の目標は完全に達成されていますからね。文書通りだとすると2年後の25年がどうなるのか、大いに心配されるところです」(同)
今回のルカシェンコ大統領による「地域民防衛軍」創設宣言の背景は不明だが、報道された機密文書との嫌な符合に、不安は募るばかりだ。
(灯倫太郎)