韓国芸能界に、これまでの勢力地図が塗り替えられるほどの激震が走っている。あのBTSを擁するHYBE(ハイブ)が東方神起やSHINee、少女時代などが所属するSMエンターテインメントを飲み込もうとしているからだ。
「動きだしたのは2月10日のことです。ハイブがSMの創業者で大株主でもあるイ・スマン氏から18.5%の持ち株のうちの14.8%の株を買い取ることを発表、さらにハイブは少数株主が持っているSM株をTOB(株式公開買付)で43.5%まで買い増すと発表したのです」(週刊誌記者)
これには業界関係者も仰天。というのもSMはこれより先に、インターネットサービス企業のカカオと戦略的パートナーシップを結ぶとして、9.1%の出資を受けるとしていたからだ。つまり、創業の大株主と現経営陣との意見が全く割れていたことが一連の動きで明らかになったわけだ。
現在の韓国の大手芸能事務所の状況を見ると、SMとJYPエンターテインメント(TWICE、NiziUなど)、YGエンターテインメント(BLACKPINK、TREASUREなど)の3大事務所が先発としてあって、後発のハイブがBTSの大躍進もあり3社を抜きトップとして君臨している。ハイブの21年の売上高は約1256億円で、他の3社の売上高の合計とほぼ同額なので、いかにハイブが一足飛びに拡大したかが分かる。
そしてそのハイブが売上高約702億円で2位のSMを傘下に収めようというのだから、圧倒的な巨大勢力が生まれることになる。これにはCNNも、ソニー、ユニバーサル、ワーナーのアメリカ主要レーベルのビッグ3に比類するくらいとまで報じているほどだ。
なぜこういった動きが出てきたかと言えば、前述の通りイ・スマン氏と現経営陣との意見の対立があったからだが、そこには韓国芸能界特有の不透明なシステムの問題があるようだ。
「対立の根本は、イ・スマン氏にSMから巨額の金が支払われていたからです。そこで現経営陣としてはカカオと手を結んでイ・スマン氏の影響力を薄めようとしたわけですが、イ・スマン氏がハイブを呼び寄せて対抗策を打った。韓国芸能界では、例えば日本でも人気のあるイ・スンギにデビューからの18年間で一銭も音源収益が支払われていなかったことが昨年末に発覚するなど(事務所側は否定)、前近代的な契約関係が慣習としてあることに批判の声が上がっています」(同)
ハイブとしても昨年のBTSの活動休止とメンバーの徴兵問題で稼ぎ頭を失うリスクを考え、M&Aを含めた事業の拡大に務めてきた。だから今回の話は願ってもないところなのだが、つまり見方を変えれば、今回の激震はBTSの不在が招いたとも言える。
このハイブの拡大膨張路線が成功するかについては、今後、イ・スマン氏が申し立てているカカオへのSM株の発行差し止め請求に裁判所がどう判断を下すか。そして3月に開催されるSMの株主総会で他の株主がどちらを支持するかにかかっているという。
もしハイブがSMを飲み込んだ場合、SMのブランドがどうなるかは全く不透明だ。もしかしたら個々のアイーティストの離脱なんて動きが起こるやもしれず、特にSMファミリーのファンとしては、単なる会社の支配権を巡る争いには止まらない意味を持つものとなっている。
(猫間滋)