北極圏の国境に兵役逃れのロシア人が殺到か ワグネル指揮官「逃亡」の影響

 ノルウェー当局は1月22日、亡命を希望していたロシアの民間軍事会社「ワグネル」の元指揮官アンドレイ・メドベージェフ氏を逮捕したと発表(※すでに釈放)。同組織はウクライナで多数の民間人殺害に関与した疑いもあり、氏の証言による全容究明が期待されている。
 
 だが、それ以上に衝撃を与えたのは、警備が厳重なはずの国境地帯を突破してきたことだ。スカンジナビア半島北部のロシア・ノルウェーの国境は北極圏に位置し、この季節は最低気温がマイナス30度を下回ることもある。
 
 今回の出来事はロシア国内ではほとんど報じられていないが、ネット上では情報が拡散。無事に脱出できたことで、北欧ルートから不法入国を試みる兵役逃れの亡命希望者が増えるとの懸念もある。
 
「ロシア国境軍の警備が手薄なわけではないですがウクライナ戦線に兵力を投入した結果、前線から離れた地域では国境地帯であっても十分な人員を配置できていないのでしょう。それにスカンジナビア半島東部のロシアとノルウェー、フィンランドとの国境地帯は1200キロ以上もあり、大半が山や森林地帯、原野で今は一面雪に覆われています。道路も整備されていない地域のため、人っ子ひとり逃さないというのはほぼ不可能です」(軍事ジャーナリスト)

 また、ロシア領のスカンジナビア半島東部には北極海から50キロほど内陸にムルマンスクという人口30万人の街がある。ノルウェーとフィンランドの両国境から130〜200キロほどの距離で、メドベージェフ氏もこの都市にしばらく潜伏していたと言われている。

「ムルマンスクは大きな街なので身を潜めやすく、ここからなら徒歩での越境も可能。ですが、出国禁止令が出されると徴兵対象の18〜27歳(※今春からは21〜30歳への引き上げを検討中)に加え、55歳以下の男性がロシアから出られなくなる。春以降は雪も解けて寒さも和らぎますが、フィンランドは年内にも国境にフェンスを設置する計画を明かしています」(前出・ジャーナリスト)

 やはり越境は簡単ではないようだ。

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