アメリカ政府が、ロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」を国際犯罪組織に指定したのは26日のことだが、さっそくワグネルに対する兵糧攻めがスタートしたようだ。
BBC Newsによれば、アメリカ政府は同日、ワグネルにウクライナの人工衛星画像を提供していたとして中国企業への制裁を発表。さらに、同社ほか15社を制裁の対象としたことを明らかにした。
「米財務省の外国資産管理局によると、この中国企業は、長沙天儀空間科技研究院(スペースティー・チャイナ)で、中国航天科工集団、中国電子科技集団などの国有企業ほか、国立の中国科学院大学など有名どころが提携先に名を連ねる中堅企業。今回の制裁理由は、同社がロシアのテクノロジー企業に対し、ウクライナの衛星画像を供給したことでワグネルの戦闘作戦に貢献した、というものです。制裁により、同社ではアメリカから資産の移動や支払い、輸出などができなくなるため、相当大きな痛手となることが予想されます」(全国紙記者)
今回のウクライナ侵攻において中国政府に対し米政府は幾度となく、兵器をロシアに供与することが、どのような結果を招くかについて警告してきたという。しかし、記事によれば、米政府はすでに複数の中国企業がロシアに兵器以外の支援を行っていることを確認し、中国政府にも懸念を伝えているという。
「ジャンピエール米報道官は『ロシアが仕掛けた戦争を物質的に支援することで生じ得る結果について、中国側に引き続き伝達する』とコメントしていますが、はたして中国政府が国内企業のこうした活動を、どこまで把握しているかは不明ですし、そもそも中国政府がどこまで米政府の言うことを聞くかどうかは疑問です。ただ、今回の制裁発動で中国政府もなんらかのアクションをとるでしょうから、今後の展開が注目されます」(同)
今回の制裁で米政府は同社を含む16社のほか、8人の個人と飛行機4機に対し、ワグネル支援の「世界的ネットワーク」と断定、制裁対象としたことを発表しているが、
「なかにはアフリカ中部に本拠を置くセキュリティー企業や、アラブ首長国連邦(UAE)の輸送会社なども含まれており、ジャネット米財務長官は『制裁によりプーチンの戦争マシンの武装を阻害する』と宣言していますからね。今後、対象がさらに広がること必至です」(同)
米諜報筋の談話を紹介したCNNによれば、中国企業のなかには殺傷力のない装備品である防弾チョッキやヘルメットなどの装備品をロシアに売却している会社もあり、2月に予定されているブリンケン国務長官の訪中では、さらに圧力をかけると見られている。
ワグネルを中心としたロシア軍に対する米国の兵糧攻めが拡大する中、またしても米中の水面下での戦いが激しさを増す可能性も出てきた。
(灯倫太郎)