「夢のラーメン屋経営」でガッポリ儲ける方法(2)出汁は煮干しでランチ営業のみ

 極論すれば商売で儲けるためには、いかにして入ってくるお金が出ていくお金を上回るか、ということに尽きる。石動氏が徹底したのは、いかにして食品ロスを出さないか、ということだった。

「飲食店の経営において、食品ロスはお金を捨てることと同義です。私の場合、その1つの解決策として選んだのが煮干しラーメンでした」

 ドラゴンラーメンのメニューはすべて煮干しを使用した出汁を基本に、そこにアレンジを加えた5種類に絞った。チャーハンや餃子など、ラーメン屋の定番メニューはなし。さらに煮干しは乾物であるため、長期保存が可能。つまり、食材の廃棄を少なくすることにつながるのだ。

「スープには他に鶏のモミジ(足)も使用しています。煮干しやモミジは豚骨や牛骨よりも、煮込む時間が短くて済みます。これにも利点があって、兼業ラーメン屋である私にとって、仕込みの時間が短いことは非常に有益なんです」

 ドラゴンラーメンの営業時間は11時から14時。石動氏の1日は朝9時に仕込みを開始し、昼はラーメンを作り、15時以降は士業のクライアントの相談に乗ったり、書類作成に勤しむ、といった形だった。仕事の効率化を図るためにも、煮干しは最適だったのだ。

 当然ながら、仕込み時間の短縮は光熱費を抑えることにも一役買っている。ランチ営業に特化したことも、アイドルタイムをなくし、人件費を抑える効果があった。

「飲食店の経営で安定して利益を出すための原価率は30%と言われます。開店当初は、それこそ食材を近場のスーパーで買ったりもしていましたが、営業を続けるにつれて安い仕入れ先を見つけられるようにもなった。そのおかげで、味を向上させるためのラーメンの研究も続けられました」

 何より重要なのは、いわば「できる限り損をしないシステム」を開店時から意識し、採用していたことだった。それができたのは、石動氏が「会計」の仕組みを熟知するプロであったからに他ならない。その甲斐あってドラゴンラーメンは、行列も珍しくない地元の人気店に成長したのである。

「一口に儲かりやすい職業というのはありません。ラーメン屋も提供するラーメンが違えば原価率も変わるし、立地や店の規模で家賃などの固定費も変わってきます。ですが、ラーメン屋は参入の敷居が高くない上に、会計管理を疎かにするどんぶり経営の店が一定数存在します。だから新しい店がオープンしたと思ったらすぐに潰れる、ということが起きやすいんです」

 石動氏は22年6月に、自身の実体験を踏まえて飲食店での会計の重要性をやさしく解説する著書「会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる」(日本実業出版社)を上梓した。ラーメン屋を例にとり、儲けを出すための仕組みと必要な知識をさらに詳しく説いており、一部のラーメンマニアが「こんなことまで書いていいの!?」とザワついたという話題の書だ。しかしドラゴンラーメンが閉店という結果を迎えたのは先述した通り。

 次回からは石動氏が直面したラーメン屋経営の難しさと、今後の展望についてお届けする。

*週刊アサヒ芸能2月2日号掲載

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