池上彰がズバリ解説「米中大異変で日本はどうなる?」(4)広島サミット後に解散総選挙

─いよいよ日本についてうかがいます。まずは、経済の見通しについて教えてください。

 日銀の黒田総裁が4月で任期を迎えます。今もゼロ金利を続けても景気は回復しない。黒田さんのやり方では限界になっています。岸田総理は早くアベノミクスから脱却したい。金利ゼロというのは本来あるべき姿ではありません。そのために黒田総裁を辞めさせ、その出口をおそるおそる探ることになるでしょう。

─ユニクロなど、一部大手企業は賃上げを行うことを発表しています。

 世界を相手に戦っている企業は、国際的な人材の引き抜き合戦になるため、これからは初任給などをどんどん上げていきます。結果的に、日本の大企業も給料を上げることになるでしょう。

─では、中小企業はどうでしょう?

 実は、今こそ賃上げのチャンスなんです。今回のインフレは悪いインフレ、つまり円安が進んだために輸入品目が値上がりした。さらに、石油価格などの原材料の上昇も物価高の大きな要因です。つまり、景気はよくならないまま物価が上がったのです。そのため、今は値上げされても多くの人が「原材料などコストが上がっているから多少値上げするのはしょうがない」と受け入れているのではないでしょうか。物価高に対応するには、まずは社員の給料を上げる必要があります。今、岸田総理が各企業にインフレ率を超える給与の引き上げをお願いしていますよね。みんなが給料を上げれば、それにより消費が喚起され、いいインフレに転じさせる可能性があるわけです。

─確かに、給料が上がれば物価高にも何とか耐えられる─。

 円安の今の日本は、国際的に見ても給料が安い現状があります。ベトナムなどからの技能実習生も減っています。さらに少子高齢化で人口が減っており、今後は急激に労働力が不足します。給料を上げないと優秀な人材が入ってこないので結果的には給料は上がるのではないか、という話もあります。春闘でどれだけ給料が上がるかによって、日本経済の今後が決まる正念場と言ってもいいでしょう。皆さん「給料上げろ」と声を上げましょう。

─岸田総理の旗振りにかかってきますね。5月には広島でG7サミットが予定されています。

 岸田さんの悲願ですね。広島選出の岸田さんは核廃絶への思いを強く持っています。サミットを広島で開催し、核保有国であるイギリスとアメリカとフランスの首脳に平和公園で「被爆の実相」を見せたいわけです。もちろん、核廃絶となるわけではありませんが国際世論を醸成したいのです。その後は、解散総選挙に打って出るのではないでしょうか。選挙で統一教会とズブズブの安倍派の議席を減らすことができます。さらに、新しい内閣を立ち上げ、統一教会に汚染されていない議員ばかりを並べれば支持率アップが期待できるわけです。

─「黄金の3年」どころか、総選挙とはビックリです。

 解散総選挙は総理になったら誰もが一度はやりたい伝家の宝刀なんですよ。6月18日、7月23日の日曜はどちらも大安ですので投票日にはうってつけです。

─なんと候補日まで! 引き続きの講義も楽しみにしています。

池上彰(いけがみ・あきら)1950年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。報道局社会部でさまざまな事件を担当。94年より11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年にNHKを退社、フリージャーナリストとして多方面で活躍。現在は名城大学教授、東京工業大学特命教授、東京大学客員教授など11の大学で教える。「伝える力」シリーズ(PHP新書)、「おとなの教養」(NHK出版新書)、「私たちはどう働くべきか」(徳間書店)など著書多数。近著に「そこが知りたい!ロシア・ウクライナ危機 プーチンは世界と日露関係をどう変えたのか」(徳間書店)

*週刊アサヒ芸能2月2日号掲載

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