米国政府は20日、北朝鮮から携帯型ロケットランチャーやミサイルなどの武器提供を受けたとして、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を重要な国際犯罪組織に指定。米国内の資産凍結とともに、米国人によるワグネルへの資金、商品、サービス提供を禁止する追加制裁措置を発表した。
これを受け、翌21日にはワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は米政府に対し、「われわれがどのような罪を犯したのか」とする公開書簡で猛反論しているが、米側はワグネルを残虐行為と人権侵害を行う犯罪組織と断定。「ワグネルの支援者を特定し、暴露し、容赦ない措置を取る」と強い姿勢を示している。
現在、契約社員1万人、4万人の囚人を含む約5万人をウクライナに配備しているとされるワグネルだが、創設者のプリゴジン氏が「プーチン大統領の料理人」と呼ばれ、ロシア国内でレストランやケータリング事業を展開していたことはよく知られる話だ。
「英メディアの報道によれば、プリゴジン氏は1961年6月1日、レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ。全寮生学校を卒業後、ほどなくしてレニングラードで窃盗事件を起こし、執行猶予付きの判決を受けたのち、81年には強盗・詐欺などの犯罪で9年間、刑務所暮らしを余儀なくされたと言われます」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
その後、継父と一緒に立ち上げたホットドッグ販売のネットワーク会社を経て、食料品チェーンの責任者となり、大儲け。その資金を元手にサンクトペテルブルクでカジノや高級レストランを展開。2001年にシラク仏大統領がロシアを訪問した折に、
そんなプリゴジン氏がワグネルグループを設立したのは、2014年のこと。なぜレストランチェーンで成功した実業家が軍事会社を立ち上げたのかは不明だが、
「この年ワグネルは、ウクライナ東部ドンバス地方で活動する親露派武装集団に援軍を送り、さらにはシリア内戦ではアサド政権を支援しています。ただ、ロシアでは法律で民兵を組織することが禁じられているため、当初は創設者であることをひた隠しにしていた。ところが、昨年から始まったウクライナ侵攻にワグネルが貢献したことで、表舞台に出てきた。最近では収監中の受刑者をスカウトする場面までSNSでアップし、募集のPRに余念がありません。先日はプリゴジン氏がワグネルの戦闘をめぐりプーチン大統領に圧力をかけたとも報じられ、その存在感は高まるばかりです。現地独立系メディアは、プリゴジン氏がこの戦争を機に次は政界に進出するのではとの見方を示しています」(同)
ロシアの次期大統領選は2024年。「プーチンの秘密部隊」の創設者は「プーチンのライバル」になりうるか。
(灯倫太郎)