ウクライナ侵攻は失敗続きで、「クリスマス停戦」を申し出るも、ゼレンスキー大統領からは「どうせウソだろ!」と罵られ、強硬派からは「核で脅し続けろ」と突き上げられるなど、もはや孤立無縁の状態と言われるロシアのプーチン大統領。
そんな中、プーチン大統領は、鳴り物入りで総司令官に就任させたばかりの「アルマゲドン将軍」こと、スロビキン氏を副司令官に降格させた。そして、後任にロシア軍最高指揮官であるワレリー・ゲラシモフ参謀総長を兼職させて関係者を驚かせている。
「スロビキン氏は、シリア内線などで民間人を無差別虐殺するなど、その残虐性から『人類最後の戦争』をもじってそう呼ばれてきた人物。昨年10月に司令官に就任した2日後には、ウクライナ12都市にミサイル84発を撃ち込み、発電所などインフラ施設を集中破壊しました。ただ、それ以降はプーチン氏や強硬派が求める戦術で大きな成果を出すことができないでいました。つまり期待に応えられなかったことが、わずか3カ月での更迭に繋がったとされています」(全国紙記者)
後任のゲラシモフ氏は制服組のトップ。軍の最高指揮官が総司令官を兼務し、みずから作戦の指揮を執るのは極めて異例ということもあり、イギリス国防省では、次のように分析しているという。
「ロシアが追い込まれていて、目標が達成できていないことを示している」
さらに、プーチン大統領のいらだちを全世界に知らしめたのが、11日に行われた今年初の政府の会議の映像だ。この映像はRIAノーボスチ通信など、ロシア国営メディアを通して全世界に配信されたのだが、会議の開始早々、プーチン大統領は側近と言われるマントゥロフ副首相を声を荒らげて面罵したのである。前出の記者が続ける。
「会議でマントゥロフ氏が、戦闘機と民航機の契約状況を説明していた際に、プーチン氏がいきなり副首相の発言を遮り、『ヘリコプターを含む約700機の航空機の契約を国防省と整理しなければいけない。ところが企業はまだ注文を受けていないと聞いた。私をだますのか」と激怒。驚いた副首相は硬直状態のまま『最善を尽くす』と答えたのですが、怒りが収まらないプーチン氏は、『デニス・ヴァレンチノヴィッチ(マントゥロフ氏の名前)、いったい契約をいつするのか。時間がかかり過ぎている。ふざけているのか』『我々が直面している状況を理解できないのか、ただ最善を尽くすだけでなく、1カ月以内に終わらせるべきだ』と命令し、マントゥロフ氏はもちろん、他の12人の閣僚たちを凍りつかせたのです」
もっとも、普段は冷静沈着なイメージのあるプーチン大統領が、公の場で怒りを爆発させる姿は極めて珍しい。それゆえ、こんな見方もある。
「プーチン氏が副首相を『晒しもの』にした背景には、部下をメディアの前で叱咤することで、他の閣僚や関連産業に従事する人々の引き締めを図り、さらに自身に向かう批判をそらす狙いがあったのでは、と指摘されているんです。ただ、自己顕示欲が強くナルシストなプーチン氏が、公に自身のイライラした姿を公開したわけですからね。どんな意図があったにせよ、それだけでも戦況や自身の立場が切羽詰まっている様子が見て取れます」(前出・全国紙記者)
現場指揮官の首のすげ替えと副首相への叱責。プーチン大統領のイラ立ちと苦境は頂点に達しているようだ。
(灯倫太郎)