日本の内閣に相当する中国国務院が、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策に、事実上の終止符を打つ措置を発表したのは今月7日のこと。
この政策転換により、中国各地の公共施設では健康管理アプリの提示が不要になり、集団検査も縮小。さらに、濃厚接触者の隔離が不要になったことで、マンションや区画全体を封鎖する、いわゆる集団隔離も個別での自宅療養に変更されることになった。
「中国指導部は、今回の政策転換の理由を明確にしていませんが、背景に新疆ウイグル自治区のマンション火災に端を発した『白紙革命』があったことは明らか。習近平体制も3期目を発足させたばかりで、このまま市民らの抗議を放置すれば政権の足もとが揺らぎかねません。そんな判断もあり、180度の方向転換となったと考えられますが、ひたすらPCR検査をかける状況から検査数を抑える方向に転じたことで、感染者がどこにいるかわからない状態になってしまった。結果、さまざまな地域で発熱外来がパンクするといった、パニックが起きています」(中国事情に詳しいジャーナリスト)
すると案の定、中国国内では「解熱剤」の爆買いによる売り切れが続出しているという。
「自宅療養が認められた分、薬は自力で確保しなければいけなくなった。中国政府は“発熱したらこれらの薬を飲んでください”という案内はしているものの、中国製の解熱剤は粗悪なものもあるため、国内ではあまり人気がない。そこで、目をつけたのが日本の風邪薬で、SNS上では『パブロンゴールド』のほか日本の風邪薬がコロナに効くという噂が流れ、日本で購入した薬を中国に送る転売ヤーも出現。一儲けを狙った爆買いが始まっているようです」(同)
実際、都内の大手薬局チェーンでは、ここ数日で解熱剤の売り上げが急増。そのため、「お一人様1点限り」といった購入制限をかける店も目立つようになった。
また中国の街中で行われていたPCR検査場が廃止されたため、抗原検査キットやパルスオキシメーターが国内で品切れ状態となり、これらの製品も日本で確保する動きが広がりつつあるという。
「コロナに関する報道も多く、ある程度科学的な知識を持ったうえで行動してきた日本人と異なり、政府に言われるがまま感染者を強制的に隔離するゼロコロナ政策に慣れてしまった中国の人々は、ある意味でコロナを『正しく恐れる』すべを知らない。そのため、中国のネット上では今でも『コロナになったらニンニクがいい』『酢を飲んでいればコロナにならない』といったデマが横行し、関連商品が品切れになるという事態が起こっています。まさに、3年前のコロナパニックの再来を予感させますね」(同)
中国の唐突な政策転換がもたらす余波は、しばらく続きそうだ。
(灯倫太郎)