ウクライナ国境に近いロシア南西部クルスク州の知事が、空港付近にある石油貯蔵施設で、ドローン攻撃による火災が発生したとSNSで明らかにしたのは12月6日のこと。
ロシア内陸部では、前日にも2カ所の空軍基地が相次ぎドローン攻撃を受けいているが、
「5日に爆発のあった2基地は、いずれも核爆弾を搭載可能なツポレフ160や、ツポレフ95といった、ロシアが主力とする長距離戦略爆撃機の出撃拠点。ロシア国防相の発表によれば、首都モスクワに近いリャザニ州のディアギレボ空軍基地では、燃料輸送車が爆発して3人が死亡。また、ロシア中部サラトフ州のエンゲリス空軍基地では、ウクライナ各地へのミサイル攻撃に使用されるTU95爆撃機2機が損傷したとしています。ただ、後者の基地は、ウクライナから600キロ以上離れているため、ウクライナ側の攻撃であった場合、理論上、モスクワへの攻撃も可能なことを示唆しています。この事実で、さらにロシア陣営の緊張が高まったことは間違いないでしょう」(全国紙記者)
ロシア国防省は5日、「ウクライナ軍による攻撃だ」と主張、ウクライナ全土に対するミサイル攻撃を行った。とはいえ、これまで米欧諸国がウクライナに供給してきたのは、射程を制限した兵器。そのため、ウクライナがロシア内陸部へ長距離攻撃を行うことは物理的に不可能なはずだった。
一連のドローン攻撃について、ブリンケン米国務長官は6日、「米国がウクライナに促したことも、攻撃を可能にさせるようなこともしていない」との声明を発表している。
「一方で、ウクライナ側が自国で新型ドローンを開発したというニュースが流れていて、実際4日には、ウクライナの軍需企業の広報担当者が地元テレビで、開発中の射程1000キロの新型軍用ドローンについて『実戦テストしたいと考えている』と述べています。加えて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問も『ロシアは他国の空域に何かを発射すれば、未知の飛行物体が発射地点に戻ってくることを知るべきだ』と、婉曲的ながらも関与を示唆しています。となれば、今回のドローンは他国からの供与ではなくウクライナが自ら開発した可能性が高いということになります」(同)
そんな観測がある中で、ロシアの政権系メディアが伝えたのが、ソ連製のドローン「TU141無人偵察機」転用説だ。
「今回使用されたドローンは500キロ以上も飛行しており、ウクライナ軍に供与された航続距離150キロのトルコ製攻撃型ドローン『バイラクタルTB2』ではないのは明らか。一方、TU141はソ連時代、ウクライナ北東部ハリコフの工場で生産され1979年から運用されており、当初から航続距離は400キロあった。それを2014年のロシアによるクリミアへの軍事介入以降に改良し、航続距離を1000キロまで延ばしたともいわれている。それが使用された可能性もあるというのです」(同)
ゼレンスキー大統領は6日、ウクライナ東部の最前線近くを訪問。激戦が続くドンバス地方などで前線の兵士を激励した。
片やプーチン大統領も5日、自ら車を運転して一部復旧したクリミア大橋を渡るパフォーマンスを披露したが、こともあろうかその当日、自国の軍事施設が攻撃されたことでメンツが丸つぶれになった格好だ。
「ただでさえロシア軍の劣勢が伝えられる中、プーチンは民間軍事会社『ワグネル』の創設者であるプリゴジン氏や、チェチェン共和国のカディロフ首長など、強硬派から強く突き上げられているといいます。カディロフ氏などは、いまだに戦術核使用を主張していますからね。今回のドローン攻撃をきっかけに、最悪の事態が起こらないことを願うばかりです」(同)
モスクワが射程距離となったウクライナのドローン攻撃に対し、ロシアはどんな手段に出るのか‥‥。予断を許さない状況になってきた。
(灯倫太郎)