今年11月5・6日に3年ぶりの開催となった「大道芸ワールドカップin静岡」。前号の市街地エリアからメイン会場となる駿府城公園エリアへ移動した。
駿府城は徳川家康が晩年を過ごした城だけになかなか広く、アーティストがショーを行うパフォーマンスポイントのほか、ご当地グルメや特産品のブースも数多く出店し、さらにお祭りムードが高まっていた。
ひときわ観客を集めていたのはWittyLook(ウィッティールック)。一輪車を使ったアクロバティックなサーカス芸で人気の男女ペアだ。今回は一輪車の世界王者DAIKIさんが右足を大怪我したため、一輪車を封印。相方の女性クラウンCHEEKY(チーキィ)!さんのコミカルな柔軟芸やジャグリングを中心にしたプログラムになった。
イベント初日で、緊張もあったのかDAIKIさんはミスしがち。するとCHEEKY!さんがお詫びとばかりに腕立て伏せをする。失敗も笑いに転じる芸人魂とそれさえも楽しむ観客の暖かさ。これぞライブ! いいものを見てしまった。
時間が経つほど、駿府城公園内の観客が増えてくる。椅子をいくつも積み上げて約6メートルの高さで逆立ちする中国雑技王、ドラムやギターなど10種類の楽器を身につけて演奏するワンマンバンドなどを遠目に見ると、すっかり陽が傾いてきた。
最後に選んだのはポールアクロバットダンサーのめりこさん。恋人に会いたくて放火事件を起こし、最後は火刑になった江戸時代の悲話「八百屋お七」をポールダンスで表現する。セリフは一切なく、表情とダンスと音楽だけで勝負する。
この演目は2016年から2大会連続で見ていた。その時は大がかりなセットを組んでいたが、今回は基本的にステージポールのみ。よりダンスを魅せたいという意気込みを感じた。
最初は清楚な町娘の姿で登場し、やがて恋心が高ぶり、なんとステージ場で火を放つ。恍惚とした表情は鬼女のそれに、衣装も妖艶ものに変わり、次々に空中で華麗な技を決めていく。最後は白衣をまとい、穏やかな表情で天に召される。
5年前に比べ、より前へより深く「進化」と「深化」の両方を遂げており、終演後も感動のあまり、しばし言葉が出てこなかった。
一日中、大道芸を楽しんでもうお腹いっぱい。両足もパンパンに張っている。万歩計を見ると2万歩近く歩いていた。こんなゆるゆる歩き旅もまた楽しい。
内田晃(うちだ・あきら)自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。