ゆるゆる「歩き旅」のススメ!(5)「大道芸ワールドカップ」を楽しむ

 大道芸と聞いて、猿回しや南京玉すだれを連想した方、オイラと同じ昭和のおじさんでは(笑)。現代の大道芸はジャグリング、マジック、パントマイム、サーカス芸など多分野にわたり、芸人はアーティストと呼ばれる。パフォーマンスは1回20〜40分ほど。音響設備もしっかりして、立派なショーになっている。

 そんな大道芸の祭典が、1992年に静岡市で始まった「大道芸ワールドカップin静岡」だ。コロナ禍で中止が続いたが、今年11月5・6日に3年ぶりの開催となった。今回は海外アーティストを招き、優勝者を決める「ワールドカップ部門」はないが、国内32組が出場すると知り、いそいそと足を運んだ次第である。

 会場は駿府城公園、市街地、サテライト(清水区ほか)の合計4エリア。まずは静岡市役所から続く青葉シンボルロードがメインとなる市街地エリアへ。

 アーティストのパフォーマンスポイントは何カ所かあり、それぞれ交代で芸を披露する。どのポイントも上演前に半円形の人垣ができ、前4列は地面に座り、それ以降は立ち見になる。運営スタッフが指示するわけでもなく、観客同士の呼吸で完成する人垣を見ると、静岡市民は大道芸を見慣れているなと感心する。

 最初に選んだのはデビット・ラムゼイさん。マジックやジャグリングの技に加え、流暢な日本語で笑いを誘う。最後に巨大なシャボン玉を飛ばすとパフォーマンスは終了だ。

 ここからが大道芸のおもしろいところ。観客は満足度に応じて投げ銭をプレゼントする。硬貨もあれば紙幣もあり、ひと目で評価がわかる。

 次のパフォーマンスポイントへ向かうと、突然2人のピエロが通りに現れて演奏を始めた。オーバートーンという2人組で、1人は車輪をつけた〝走るピアノ〟に乗り、相方はラッパを吹く。ピアノには大きな財布がついていて、子供が投げ銭を入れると、ピコーンとスーパーマリオの効果音を鳴らし大喜びさせた。

 静岡市役所の玄関前もこの日はパフォーマンスポイントの1つ。階段に観客がズラリと座り、ヨーヨーの世界チャンピオン3人組が華麗な技を披露していた。

 このあとも西洋風の竹馬を履いた足長巨人が現れたり、星条旗を持つ宇宙飛行士が投げ銭を入れると無重力のように両足を浮かせたり。街全体が劇場となり、あちこちから歓声が聞こえた。

内田晃(うちだ・あきら)自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。

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