戦時下で見事なまでの異能ぶりを開花させるゼレンスキー大統領。しかし、戦禍に備えた危機管理能力においても優れていたという。国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう指摘する。
「いかにゼレンスキーが優れていても欧米の支援がなければとっくに負けていてもおかしくない。昨年11月にベラルーシ国境付近にロシア兵約10万人が配備されているとメディアが大騒ぎしたが、侵攻が始まるまでにゼレンスキーは武器の供給、国内サイバー網の整備など下準備を進めていた。また、ロシアが攻撃開始したら、経済制裁を行うよう、政府高官は西側諸国を訪問していた。つまり一戦交える前から用意周到に戦力を蓄えていたことが、今回の形勢逆転につながったと言えるのです」
開戦前夜は劣勢が伝えられたウクライナ軍が大金星をあげそうだが、今後はどうなるのか。
「へルソンからいったん退却したロシア軍とウクライナ軍は、ドニエプル川を軍事境界線としてにらみ合いが続く。地上戦で押され気味のロシア軍は、防空ミサイルにより空爆もままならない。となるとミサイル攻撃しかなくなる。ただし、ロシアもミサイルがあり余っているわけではない。地上戦で負けるなどの劣勢の中、勝っている状況を作り出すためにミサイル攻撃を続けることになる」(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏)
少なくとも年内は停戦には程遠い状況が続くというが、それでも軍事評論の井上和彦氏がこう喝破する。
「国際社会の共感を集めたゼレンスキーの初動が全てだった。今後、勝っても負けてもロシアにかつての地位は用意されていない。これまで周辺国に兵器を提供してきたロシアの兵器が枯渇し、今やイランや北朝鮮などに頼るありさまです。無尽蔵に真新しいハイテク兵器を手に入れて戦うウクライナを相手に、ロシアの勝ち目はないでしょう」
知略に長けたゼレンスキーがプーチンを完膚なきまでに叩き潰す日。そのカウントダウンが始まったか!?
*週刊アサヒ芸能12月1日号掲載