ゼレンスキー大統領「電撃訪米」の裏に隠された「真の狙い」と「ニクい演出」とは

 21日、アメリカの首都ワシントンを電撃訪問し、バイデン大統領と首脳会談を行ったゼレンスキー大統領。会談後には、青と黄色のウクライナの国旗を彩ったネクタイやスカーフを身に着ける議員たちが集まる中、「皆様やアメリカの人たちに話ができるのは非常な名誉です。事前の予想や悲観的な見方に反して、ウクライナは滅びなかった。ウクライナは生きていて、抵抗している」と演説し大きな拍手喝采を浴びた。

 とはいえ、21日朝方の速報からわずか数時間後の電撃訪米に、全世界が驚愕した。その背景にはどんな意味があるのか。全国紙記者が解説する。

「1つはアメリカ中間選挙で共和党が勝利したことです。上院は民主党が多数派を占めるも、下院は共和党が多数派となったことで、いわばねじれ状態です。周知のようにトランプ前大統領はプーチンとも良好関係にあり、共和党の中には、ウクライナへの軍事・経済支援に批判的な声がある。もし、アメリカ連邦議会で予算が否決され、支援を打ち切られでもしたら、ウクライナは戦えなくなってしまいます。つまり、ゼレンスキー氏としては一日でも早く訪米し、何がなんでも上下院議のハートをつかまなければならなかった。それが今回の電撃渡米の最大理由だと考えられます」

 さらに、これまでウクライナが熱望していた、地対空ミサイルシステム「パトリオット」をついにアメリカが供与。前出・記者が続ける。

「冬の到来とともに、ロシア軍による大規模攻勢が予測される中、兵器の延長供与で戦渦に著しい影響が出る可能性もあります。つまり、最終的な停戦ラインはやはりアメリカが握っている。だからこそ手厚い軍事支援をお願いしますよ、というのがゼレンスキー氏の思惑でしょう。どうしても手に入れたかったパトリオットを手中に収めたことで、支援の規模が拡大する可能性も出てきました」(同)

 米メディアによれば、ゼレンスキー氏は21日の早朝、隣国ポーランドまでは列車で移動。ポーランドからF15戦闘機が護衛につき、米軍機でワシントン郊外のアンドリュース空軍基地に降り立ったとされるが、2月の開戦以降、同氏がウクライナを離れたのは初めてだ。

「ゼレンスキー氏は、訪米前日に東部の激戦地バフムトを訪問し、兵士を激励しています。そのとき部隊長に勲章を手渡そうとすると、隊長は『これはバイデン大統領にあげてくれ』と返した。ゼンレンスキー氏はそれをホワイトハウスまで持って行き、『あなたが送ってくれたロケット砲部隊の隊長が、この勲章をあなたにと言っています』と手渡したというんです。ゼレンスキー氏はもともとドラマ俳優ですが、そんな彼がいつものミリタリー服でホワイトハウスに現れ、それを思い入れたっぷりにやったわけですから、アメリカ人に響かないわけがない。強烈なアピールにもなったことは間違いないでしょう」(同)

 行動力と発信力に加え、類稀なる「演出力」。この、極めて戦略的な動きを、是非どこぞの首相も見習ってほしいものだ。

(灯倫太郎)

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