涌井トレードの舞台裏「持ち掛けたのは中日」でも「阿部との交換は計算外」か

 中日内野手・阿部寿樹と楽天投手・涌井秀章の交換トレードが15日、両球団から発表された。

 このトレードの一報が入るのと同時に聞こえてきたのは、「打撃力の弱い中日が、阿部を出しても大丈夫なのか?」という声。中日の今季チーム打率は.247(リーグ4位)、総本塁打数「62」は12球団ワーストだ。
 
 阿部は今季、打率.270、本塁打9、打点57。本塁打・打点はビシエドに次ぐチーム2位である。“阿部ロス”がそのまま攻撃力のダウンに繋がりそうだ。

「今回のトレードは、中日側から持ち掛けられたもの」

 これは、楽天側の関係者から出た証言。先発ローテーションを託せるピッチャーがもう1人欲しいとし、最初から涌井の名前を挙げていたそうだ。中日側がいきなり「阿部を出しても」と言ったかどうかは教えてもらえなかったが、

「右打ちの内野手を獲れたのは大きい。阿部はショートとキャッチャー以外なら、どこでも守れるし」

 と、先の関係者はトレード成立を喜んでいた。もちろん、涌井も中日サイドの狙い通り、先発ローテーションの一角を担ってくれそうだが、こんな指摘もある。

「今季の先発は、大野雄、柳、小笠原、高橋宏、松葉。6人目は流動的でした。上田洸太朗の成長に期待する声があり、ドラフト1位の仲地礼亜(沖縄大)も即戦力投手として計算していたはず。中日はそこまで先発投手のコマ不足に悩んでいなかったはず」(名古屋在住記者)

「みやざきフェニックスリーグ」で先発転向のため、奮闘してきた根尾昂のモチベーションも懸念される。

「大野雄、柳、小笠原、高橋宏の4人については1人でも故障したら、大きな戦力ダウンです。松葉は広いバンテリンドームでしか通用しないみたいな言われ方ですし、先発投手がしっかりゲーム主導権を握ってくれなければ怖いと、立浪和義監督は考えたのでしょう」(前出・同)

 本塁打数チーム2位の阿部は放出、3位のアリエル・マルティネス(8本)も退団。クリーンアップの3人中2人がチームを去った。若手野手の台頭がなければ、来季もロースコアの展開となる。

 先発投手のゲーム主導権はともかく、立浪竜は交渉の主導権を握れなかったのかもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

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