中日・涌井秀章、史上5人目「4球2ケタ勝利」クールキャラ裏の“男気伝説”

 中日・涌井秀章投手が、また一つ球史に残る記録を打ち立てた。5月14日のヤクルト戦(バンテリンドーム)に先発し、6回4安打無失点の好投で今季2勝目をマーク。これが中日移籍後通算10勝目となり、かつて所属した西武・ロッテ・楽天に続く4球団目での通算10勝という快挙を達成した。

 この記録は実に42年ぶりで、江夏豊氏らに続き史上5人目。にもかかわらず、涌井は「中日に来て3年で10勝しかしてないのは少ない」と控えめな姿勢を崩さなかった。

 涌井といえば、ほとんど笑わないことで有名。本人も「カメラを向けられると、どうしても…」と語るだけで笑顔は見せず、過去にはヒーローインタビューを「笑顔で喋れないから」と辞退したこともあるという。

 そんな“孤高のベテラン”というイメージとは裏腹に、涌井には「男気エピソード」が数多く残されている。

 西武時代には、背番号18を2008年オフにヤクルトから移籍してきた石井一久(現・楽天GM)へ譲渡。「ぜひ“カズさん”に着けてほしい」と自ら譲ったという。

 ロッテ時代には、「千葉の夏は暑いから」と球団スタッフのためにソフトクリーム製造機を自腹で購入。楽天では、自らプロデュースしたスイーツを売る「売り子」まで担当したこともある。

 また、巨人の左腕・横川凱投手が3年連続で涌井の自主トレに志願参加。リーグやポジションが同じにもかかわらず、涌井は「投球術」から体の使い方、メンタルの整え方まで惜しみなく伝授しているという。

 黙って結果を出す。派手さはないが、昭和の香り漂うその姿こそ、38歳となった涌井の“本質”なのかもしれない。

(小田龍司)

スポーツ