ロシアのプーチン大統領が10月27日、首都モスクワで開かれたバルダイ・クラブ討論会で演説した。その演説の中身をめぐって、さまざまな憶測が広がっている。
プーチン氏は懸念される核兵器の使用について、「ロシアから言及したことはない」とし、放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」の使用についても、「政治的にも軍事的にも使う意味がない」と明言。「核の脅し」について、これまでの強気の姿勢から一気にトーンダウンしたのだ。軍事ジャーナリストが語る。
「プーチン氏の主張では、そもそも核兵器は、国家の存立が脅威にさらされた場合のみに使用できる『軍事ドクトリン』に基づいて使うものであり、ロシアによる核使用の可能性を持ち出したのは、ロシアと友好国との関係を悪化させようとしている欧米側の企みだということです。だから、先制使用はあり得ない、と。とはいえ、ウクライナが『汚い爆弾』を使う可能性に言及し、『核兵器が存在する限り、常に使用の危険性はある』と付け加えていますから、むろん発言を鵜呑みにすることは出来ない。ただ、なぜ、このタイミングでそんな発言をしたのかに注目が集まっているんです」
この発言に対し、欧米メディアの多くは、最近ロシアがあまりにも核使用をちらつかせ過ぎることで、対ロシア制裁と距離を置く中国やインドなどが懸念を強め、それをかわす意図があるのでは、と分析している。だが、一方で再浮上しているのが「重病説」だというのだ。
28日、ニューズウィーク(日本版)は、「ロシア国防相が公開した動画に映るプーチンの手の甲には、静脈注射の痕のように見えるシミが。またもや『重病説』が再燃している」との記事を配信した。
ロシア国防省が10月中旬に発表した、プーチン氏の軍事演習視察映像の中で、同氏が同行兵士の腕を右手でつかむ手の甲に、不可解なシミが浮き出ており、それが静脈注射の注射痕ではないか、との噂が広がっているというのだ。
プーチン氏の重病説は、「4月に進行がんの治療を受けた」とするアメリカの機密情報が伝えられて以来、血液のがん、パーキンソン病、認知症と、これまでにも度々報道されてきた。
「5月には亡命した元KGBエージェントが、ロシア連邦保安庁のスパイから伝えられた内容として、プーチン氏はがんの進行により医師から余命3年を告げられた、と報じられたこともありますし、6月12日の『ロシアの日』にクレムリンで撮影された動画でも、その姿に病気を疑う声が上がっていました。ただ、最近の映像を見る限り、重病人とは思えないくらい元気な様子でした。そんな中での『注射痕動画』と、核使用のトーンダウン発言ですからね、注目が集まったのも無理はないでしょう」(前出・軍事ジャーナリスト)
一時、プーチン氏は病気克服のため、ロシアのアルタイ地方に伝わる、鹿の角から抽出した血液を浴びるという「自然療法」を行っているとの噂もあったが、真偽は不明だ。果たして今回の「弱気発言」と手の甲の「シミ」が意味するものとは何なのか…。
(灯倫太郎)