大阪府民のみならず、全国区の人気を得た“大阪のプリンス”こと吉村洋文府知事。その人気を前に、“東京の女帝”と呼ばれた小池百合子東京都知事がかすんで見えるほどだ。
小池氏からかつて「排除」発言を引き出したジャーナリストの横田一氏が看破する。
「東京は大阪に比べコロナの終息が遅れているほか、次々に打ち出される物理的対策でもはるかに負けている。小池知事は口先のパフォーマンスで今まではリードしていたが、ついにボロが出てしまったということでしょう」
都知事選の告示まで残り1カ月余り。小池旋風を巻き起こし、290万票を獲得した前回の都知事選並みの圧勝を望む小池氏には、この吉村人気がとんだ目の上のタンコブに違いない。
しかし、人気を独り占めする吉村知事にも「向こうずね」はあった。
「コロナで一躍注目を浴びましたが、大阪市長時には全然人気がなかった。自分が正しいと思ったら絶対曲げないからです。『市長、それは違いますよ』と言っても聞く耳を持たない。『橋下さんのほうがまだ聞く耳を持っていた』と言う職員もいるほど。何事も独断専行型で、実は今に至っても、大阪─兵庫往来自粛の際、発表するまで知っていた府の職員はいなかったほど」(政治部デスク)
18年には市議会が反対する中、慰安婦像の設置を認めたサンフランシスコとの姉妹都市を独断解消するなど、強権素顔がかいま見えるのだ。
「今回の大阪モデルにしても、専門家委員会は、科学的エビデンスはないと言っているが、政治的判断で突っ走った。スピード感も大事ですが、人命のかかったコロナでは立ち止まって周囲の意見を聞くのも大事なはずです」(政治部デスク)
14日の会見で吉村氏と直接対峙した横田氏が言う。
「慢性的な財政難に苦しむ大阪府は、橋下知事時代から府市合わせの二重行政の象徴として病院の統廃合や保健所の削減などを進めてきた。これは橋下元知事も認めているが、吉村知事は『削減はその前の太田房江知事時代から始まったこと。数を減らしたのではなく機能集中をした』と強弁した。さらに問い詰めると『それは橋下さんの考えだ』と最後まで自分の意見を曲げなかった。橋下以上の独裁者と言えるかも」
最後に、大阪府政に詳しいジャーナリスト・吉富有治氏が警鐘を鳴らす。
「テレビの露出を増やし人気を加速させた背景にあるのは、維新の会の悲願である大阪都構想の実現。将来の総理候補という声も出ているようですが、安易に持ち上げるのは禁物。現在のヒーローが将来の独裁者でないという保証はないですからね」
コロナ禍が東京の知事をナンバーワンの座から引きずり下ろし、大阪に新たな救世主を誕生させたように見えるが、コロナの終息同様、先はまだ読めない。