コロナ後遺症に「生きる気力を奪われた」人たち(1)座った姿勢でないと眠れず

 何度もアップデートを重ねた新型変異株は、高い感染力の割に重症化リスクが低いことが定説とされる。だが、タカをくくるのは早すぎる。それこそ、生きる気力を強奪されかねない後遺症に苦しめられるケースが後を絶たないのである。ジワジワと列島中を蝕む病の恐怖を緊急レポートしよう。

「毎日、体が気だるい。日中のほとんどをベッドの上で過ごしています」

 と、伏し目がちに語るのは建設資材商社に勤める男性Aさんだ。働き盛り世代の40代ながら1週間以上出社できずにいる。

「8月中旬の盆休み中にコロナに感染しました。喉の痛みと悪寒の症状は3日ほどで快方に向かいましたが、10日間の療養期間終了後に倦怠感を感じるようになったんです。職場に復帰しても、得意先を1件営業するたび、社用車で1時間横にならないと動けないレベル。さすがに戦力にならないと判断した会社から、1カ月間の療養を許可されましたが、病院で採血検査をしても数値には異常がない。それだけに、いつ治るのか不安で仕方がありません」(Aさん)

 冬の第6波から夏の第7波にかけて、波状攻撃を繰り返す新型コロナウイルスのオミクロン株。日本全国で1日に最大24万人の新規感染者数を記録した高い感染力を持つ。従来株に比べて重症化率が低いと周知されているが、回復後の体を蝕む〝置き土産〟に頭を悩ませる人が急増しているというのだ。東京・目白にある「もちづき耳鼻咽喉科」・望月優一郎院長が窮状を解説する。

「今年に入って、コロナ後遺症外来の件数が増えています。初診・再診合わせて1日30〜40人は来られます。夏場に感染拡大したオミクロン株の『BA.5』の後遺症ベスト3は咳、痰、息苦しさの順ですが、中には重篤な倦怠感の相談もしばしば。常に疲労感が抜けない『慢性疲労症候群』に近い症例もあり、横になるのがキツくて、座りながらの姿勢でないと眠れない方までいます」

 そして悩ましいのは、ウイルス同様に掴みどころのないコロナ後遺症のメカニズムだろう。望月院長が続ける。

「年代や既往症のあるなしに関係なく、後遺症は発症します。これまでの診察を振り返っても、精神科クリニックに通っている不眠症の方と毎日筋トレを欠かさないエネルギッシュな方が、同じ倦怠感の症状でダウンしている。しかも、発症のタイミングに1週間〜1年のタイムラグがあります。コロナの症状が軽症であっても油断禁物です。まるでロシアンルーレットのようにいつ誰が発症してもおかしくないのですから」

 まさに、コロナ後遺症は千差万別。オミクロン株の持つ厄介な特性が多様な後遺症を引き起こしていた。「終わらないコロナにどう立ち向かうか」(KKロングセラーズ)の著者である医師の浅川雅晴氏によれば、

「従来株は呼吸器の炎症状態が症状のバロメーターでした。ところがオミクロン株の場合は、全身にウイルスが回って炎症を起こしてしまう。しかも、人それぞれの弱点を狙って攻撃してくる。例えば、腎臓が弱い人が腎機能低下で人工透析が必要になったり、皮膚に疾患を持つ人の髪の毛が抜けてしまうなどの報告が上がっています」

 そんなウイルスの矛先は、人体の中枢部分にまで及んでいる─。

*コロナ後遺症に「生きる気力を奪われた」人たち(2)に続く

ライフ