コロナ後遺症に「生きる気力を奪われた」人たち(3)病棟に缶詰めで歩けなくなり…

 最も無気力化が危惧されるのはシニア世代。残念ながら、コロナに感染して入院した場合には悲惨な未来が待ち受けるケースも後を絶たないようだ。朝倉医師会病院呼吸器内科部長の佐藤留美氏が指摘する。

「コロナ病棟に缶詰にされた影響で、その後の生活が寝たきりになる可能性もあります。私の勤務する病院は、完全個室で部屋の中で食事や排泄を完了できますが、どうしても行動範囲は限られてしまいます。1週間〜10日入院すると足腰が弱ってしまい、退院する頃には下肢に力が入らずによろめいてしまう方もいる。およそ2週間で普段通り歩けるようにはなりますが、80代以上になると1カ月以上時間を要することもあります。そのため、退院後に一般病棟でのリハビリを希望される方も多い」

 いくら平均寿命が延びても、健康寿命が短くなったら意味はない。そんな中、「フレイル」と呼ばれる高齢者の筋力低下が社会問題化しているという。

「コロナの感染を恐れて、老人会やゲートボールなどの寄り合いが減少したのが原因でしょう。家に引きこもってばかりで、筋力や心肺機能が大幅に衰えている。そのまま寝たきりなってしまえば、家族の介護負担が増えてしまう。最近は、地方から都心部に出てきた中高年が介護Uターンを強いられるケースが目立つ。都心と地方だと給与水準が大きく違うばかりか、そもそも再就職先があるかどうか。介護離職で失職者が増えれば、日本の産業にも大打撃を与えてしまいますよ」(浅川氏)

 コロナ後遺症に苦しめられるのは医療従事者も同じ。通常の診療以外のタスクに忙殺されているのが現状だ。医療ライターが代弁する。

「初診で新規患者が訪れるたびに陽性者の名前、年齢、生年月日、症状などを記載した書類を作成して保健所にFAXしています。大きな病院であれば看護師や事務員の作成した書類を医師がチェックする分業体制が敷かれていますが、小さいクリニックでは同じようにはいかない。1人あたり分の作成に20分〜30分かかってしまい、全てを終える頃には明け方を迎えていることもザラです」

 そんな現場の声が届いたのか、8月27日に岸田文雄総理が医療逼迫を改善するために感染者数の「全数把握」の見直しを表明したが、

「今後は届け出の対象を重症化リスクのある高齢者や妊婦などに狭める方針です。ただ、コロナに感染して亡くなるのは重症化リスクのある患者だけに限らず、10歳未満の子供が亡くなるケースもままある。医師たちは疲弊していますが、ワクチンや治療薬が定まっていない状況下で『安易に狭めるべきではない』という声も上がっています」(医療ライター)

 結局、その場しのぎの政府の対策には疑問符しか付かない。結果、疑心暗鬼の国民は自主的に自粛を続けるしか術はなく、本来なら癒やしを求めるための夜の街も経済的に疲弊していくばかり。コロナ後遺症による国民総無気力化が進む一方なのである。

*「週刊アサヒ芸能」9月15日号掲載

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