世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「鷹と虎の若手の違いが残念すぎた」

 コロナ禍で主力が相次いで欠けたソフトバンクが優勝争いで踏みとどまっている。柳田、中村晃、牧原大、周東らがコロナで抜けて、8月後半からチームを支えたのが、藤本監督が命名した「ちびっこ軍団」。野村勇、野村大、谷川原、増田、正木ら今までチャンスの少なかった若手が躍動している。自宅で同時に何試合もテレビで観戦していると、ソフトバンクの試合で「これ誰?」となることが今年は多い。でも、みんな体は大きくないけど、バットがしっかり振れている。相手もデータが少ないからやりにくいと思う。

 ちびっ子軍団の中でも特に目立つのが、ドラフト4位ルーキーの野村勇。社会人出身の25歳はパンチ力があって足も速い。8月21日に球団新人記録に並ぶ2ケタ10本塁打をマークした。新聞によると、1939年の南海・鶴岡一人さん以来だという。野村勇は鶴岡親分のことは知らないやろうけど、小久保や松中、柳田もクリアできなかった大台に達したのは大したもの。

 ソフトバンクの若手は見ていて、ハングリー精神がある。何とか目立って、アピールしてやろうとギラギラしている。打率自体は名前を挙げた選手たちも2割5分前後やけど、それ以上の活躍をしているように感じる。また、実際にいい場面で打っているから印象も強い。8月27日の日本ハム戦ではポンセにノーヒットノーランを食らったけど、翌日は正木が決勝アーチを含む4安打。ヒーローインタビューでは「結果を出し続けないと、すぐに2軍に落とされるという危機感をずっと持っている」と答えていた。ソフトバンクは3軍制で試合に飢えている選手はたくさんいる。少しぐらい活躍しても浮かれている場合でないとわかっているんやろね。

 ソフトバンクと対照的に残念だったのが阪神の若手選手。8月の勝負どころで主力がコロナで続々と離脱し、痛恨の8連敗で逆転優勝は絶望。その中で2軍から昇格したのが、将来の主軸候補として期待されている高卒3年目の井上広大やった。8月14日の中日戦でスタメン起用されたけど、4打数無安打。1軍では全く結果を残すことができずに再び2軍落ちとなった。

 もう少しチャンスをあげたほうがいいという意見もあるけど、矢野監督の気持ちもよくわかる。3位に残るためには、今は育成に時間をかける余裕はない。僕が見ていても井上は1軍では実力不足やった。構え遅れしているから、速い球についていけてなかった。何が足らないか反省して、またファームでやり直したほうがいい。

 結局、主力が戻ってくるまで代役として起用したのが、陽川や原口、江越など、1軍半の中堅クラスの選手たち。もちろん、彼らも必死に頑張っているのはわかるけど、ソフトバンクのような勢いは感じられなかった。今季は成長著しかった島田も息切れしたのか、左投手の時はスタメンから外れることが増えた。島田に関しては、首脳陣も我慢して使うべきやと思うけど、余裕がないんやろうね。

 セ・リーグの優勝争いはヤクルトが2位のDeNAに3連戦3連勝で引導を渡した。パ・リーグはソフトバンク、西武、オリックス、楽天とまだどこが抜け出すかわからない。コロナという見えない敵がいるから一寸先は闇。最後は2軍も含めた総合力の戦いとなりそうや。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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