JRA激震「競走馬サプリメント」の機密実態(1)156頭が出走除外に!

「禁止薬物」により、土日で156頭が出走取り消し! 日本騎手クラブ副会長を務める福永祐一騎手の言葉どおり「競馬史上、類を見ないほどの事件」となった6月第3週の中央競馬だが、騒動の中心にあった「栄養補助サプリメント」の実態を調べてみると‥‥。ファンも驚く「競走馬サプリ事情」を摘出する!

 まずは前代未聞の事件を振り返ろう。コトの発端は6月14日(金)、JRAの公正室あての、複数の調教師からの問い合わせだった。

「飼料に禁止薬物が含まれているとの検査結果が出たので、業者が回収したいと言っている」

 対象のカルシウムサプリメント「グリーンカル」(発売元は日本農産工業)から検出されたのは、気管支拡張作用や興奮作用があるとして競馬法で禁止薬物に指定されている「テオブロミン」。この段階で、出走予定馬を全頭検査する時間は残されておらず、「グリーンカル」を購入した厩舎の管理馬が「禁止薬物を摂取した可能性がある」として15日、16日の競走を除外されたのだ。

 除外になったのは、美浦6厩舎、栗東22厩舎の計156頭。その中には16日に開催されたGⅢ「函館スプリントS」で上位人気に推されていたダノンスマッシュもいた。

 管理する安田隆行調教師は「最悪ですね。コメントがないです。おかしいですよ。これだったら旅費も全部出してほしいくらい。こっちが被害者です」と、憤りを隠せないでいた。

 競馬専門誌記者も、次のように話す。

「安田師の発言は、出走を取り消された各厩舎の総意でしょう。『グリーンカル』は何十年も前から販売されている定番商品ですし、JRAが認めた店舗で購入したわけですからね」

 週が明けた18日、JRAは「グリーンカル」を納入していた東西28厩舎で、22日、23日に出走を予定している計365頭(美浦74頭、栗東291頭)に対する薬物検査の結果を発表。

 幸いにも全頭「陰性」だったが、これで騒動が終わったわけではない。厩舎関係者が怒りをあらわにする。

「同様の措置で『ばんえい競馬』が5頭、『金沢競馬』で20頭が競走除外になるなど、今回の余波が地方競馬でも見受けられる。馬主や厩舎への補償についてもいまだ正式な発表はないし、除外馬の優先出走期間を巡っても話が二転三転。当初の『翌週のみ』から『約2カ月間』に変更されたことで『狂ったローテーションがさらに狂う。最初からはっきりしてほしい!』と、JRAの失態を指摘する声も多いですよ」

 近年の「薬物事件」と比較しても、明らかに規模の大きさが突出した今回の事件。今後のJRAの対応に注目したいところだが、あらためてスポットが当てられたのが、問題の「競走馬用のサプリメント」。

 そこで取材を進めると、現代競馬でこの「サプリメント」が、いかに重要視されているのかが明らかになったのだ。

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