JRA激震「競走馬サプリメント」の機密実態(3)「競走馬用ポカリ」も存在する

 現在、馬用サプリの数は1000種類を優に超えるとされ、新商品も続々と発売されている。しかし、はやりすたりも激しく、そういう点では人間のサプリ業界とあまり変わらないという。競馬ジャーナリストの東濱俊秋氏が語る。

「おもしろいのは『人間の健康にいい』とされる栄養素や成分が研究発表されると、それがすぐに競馬界でも商品化されるんです。私が知るかぎり、40年ほど前の時代ですらその傾向があって、あのシンボリルドルフの父パーソロンは、飼葉にローヤルゼリーが配合されていました。最近では日本人が開発してアメリカで大流行したのが、米の胚芽から抽出した米油由来の『ガンマオリザノール』のサプリ。筋肉増強に効果があるとされています」

 中には、効率的に水分補給ができるものも存在する。東濱氏が続ける。

「『馬用ポカリスエット』と呼ばれる、電解質の水溶性紛末サプリです。ほかにオーストラリア大陸にしかいない陸鳥エミューのオイルのサプリなんかもありますね。鶏むね肉に含まれ、疲労回復効果の高い『イミダペプチド』がブームになった時にも、商品化の動きがありました」

 とにかく成長促進や健康維持のために、使えるものは何でも使うのが今の競馬界。馬の飲料用水のために水素水のサーバーを設置する厩舎まであるという。

 ただ、レースに勝つことをギリギリまで追求した結果、時に一線を越えるケースも少なくないようだ。ベテランのスポーツ紙記者が回想する。

「実は合法サプリにも微量の禁止や規制薬物が含まれていることは多く、レース当日の摂取が禁じられていたりする。ところが当日に掛かり気味だった馬を落ち着かせようと、若いスタッフが鎮静剤系のサプリを誤って摂取させた。するとその副作用から、ゲート前でピンク色の泡を噴いてしまい競走除外に。結果、不可解なことにそのサプリを製造した会社に責任が押しつけられ、JRAから1着賞金相当の補償金を請求された。『話し合って3着分(三百数十万円)にまけてもらった』と苦笑していた」

 笑って済まされる話ではないが、それほどサラブレッドが「サプリ漬け」になっているということ。競馬は「科学の競走」なのだ。

 今回の事件はサプリが絡んでいるとはいえ、故意、人為的なものではない。だが、大量の除外馬を出し、ファンをがっかりさせるようなことは今後、二度とあってはならない。

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