中国が“台湾威嚇”軍事演習も、若者の失業率は過去最悪で「習近平の正念場」

 8月2日、台湾を訪問し「我々は台湾を見捨てない」とのメッセージを送ったアメリカのペロシ下院議長。それに激しく反発した中国は4日、台湾周辺海域を目標とした威嚇目的のミサイル演習を開始。演習初日には多連装ロケットと短距離の弾道ミサイル複数が発射された。

「使用された短距離弾道ミサイルは『DF-15(東風15B)』で、推定されている最大射程800km。ミサイルは台北市の上空を飛行し、台湾東部の海上に着弾しましたが、中国のミサイルが台湾上空を通過するのは初めてですからね。両国間の緊張関係が一気に高まりました」(軍事ジャーナリスト)

 軍事面では相変わらず鼻息が荒い中国。だが一方、経済面ではバブル崩壊の危機が迫りつつある。とりわけ不動産バブルの始末が深刻化。大手デベロッパーは資産売却を加速させているが、価格下落のスピードはそれをはるかに上回る勢いだという。

「習近平政権は銀行に対し、不動産業界向けの融資を増やすよう求めていますが、全く効果が表れていません。実際、1〜6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減。さらに、分譲住宅の売上高は同28.9%減少という結果が出ていますから、不動産業界は崩壊寸前といったところでしょう」(中国の事情に詳しいジャーナリスト)

 そこで懸念されるのが失業の増加だが、特に若者の失業問題は深刻で、6月に発表された統計によれば、中国の若年層(16〜24歳)の調査失業率は19.30%。これは調査開始以来最悪の数字だといわれる。

「中国の雇用が過去最も冷え込んだのは、1999年〜2000年。このときは国有企業改革に伴う大規模なリストラが実施されたことが原因だった。ところが今回は、新型コロナウィルスの影響で経済が止まり、企業が求人募集を控え、さらに強引なゼロコロナ政策の継続で個人の消費や投資が減少。それがより経済を悪化させ、再び『超就職氷河期』を生んでしまったというわけです」(同)

 にもかかわらず、中国では8月から改正版の独占禁止法が施行され、経済危機の中でも成長が期待されるIT先端企業への締め付けを強めていくという。

「今の段階でそんなことをすれば連鎖反応が起こり、関連企業の業績が悪化することは目に見えています。そうなれば、生き残りをかけてリストラを実行する企業が増え、雇用情勢はさらに悪化するでしょう。そんな状況下でも、習近平政権は2035年に新幹線を7万キロ達成させるとして、累計赤字120兆円に膨らんでいる新幹線事業に新たに73兆円を投入すると息まいていますが、いったいどこでそんな財源が確保できるのか。中国で経済政策を担うのは国務院ですが、李克強首相をはじめ共青団出身幹部は、黙っていてもいずれ習近平は自爆するだろうと読んでいるといわれます。高みの見物といったところでしょう」(同)

 とはいえ、一番の被害者は中国国民であることは間違いない。軍事的威圧をする前に、まずは自国の心配をすべきでは、と思うのは筆者だけだろうか。

(灯倫太郎)

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