巨人がコロナの集団感染で球宴前の3連戦が中止となった。7月20日のヤクルト戦後に、38人が陽性判定を受け、チームは壊滅状態に。当日、対戦相手のヤクルトは主力を欠きながら試合をしただけに、巨人だけ試合を中止するのは不公平というアンチの声も出た。でも試合に出場できる支配下登録の野手が、9人のみの状況で試合ができるわけがない。
巨人は少しでも早い試合再開を目指しているようだけど、僕から言わせたら寄せ集めで試合をするほうが、ファンに失礼になる。ファンは名前も知らない選手を見るために球場に足を運んでいるのではなく、岡本や坂本らスター選手を見たいはず。NPBはファンのことを考えて、試合消化を最優先にする考え方を改めたほうがいい。
巨人だけでなく、今後、どの球団に起きてもおかしくないこと。不運にもヤクルトは高津監督をはじめ、山田、青木、塩見、中村ら主力選手、スタッフを含む約30名がコロナ感染して、7月中旬に6連敗を喫した。そのアクシデントがありながら2位に11ゲーム差で前半戦を終了。ヤクルトファンは胸をなで下ろしたと思う。でも、これが激しい優勝争いの佳境で起きていたら、ほんまに水を差す事態になる。
試合を開催するかどうかは12球団の代表者が集まって会議で決めているけど、明確なルールが定まっていないのが問題。1軍登録中の野手や投手で何人以上の陽性者が出たらとか、支配下登録の何人がなど、不公平にならない中止決定のルールをすぐにでも作ってほしい。優勝を争うシーズン終盤や、ポストシーズンの試合でクラスターが起きた時に「やる」「やらない」ともめないよう、今から手を打っておくべきだろう。
そもそもの話になるけど無症状の選手は検査する必要があるんかな。球場に4万のファンを集めているけど、確率で考えると、無症状の感染者は必ずいる。球団関係者だけPCR検査を受けて、陽性者を全員あぶり出す必要があるとは思えない。インフルエンザと同じ扱いに変えたらアカンのかな。熱が出たり、症状が出たら球団の判断で休ませたらいい。無症状で何日も休まないといけないというのは、選手もかわいそうや。
弱り目にたたり目となった巨人は、応援してくれるファンのために意地を見せなアカン。クラスターを言い訳にして、このままズルズルとAクラス争いから落ちるのは情けなさすぎる。阪神、広島、DeNAの2位争いはシーズン最後までダンゴ状態が続く可能性があるし、巨人もまだまだ2位になるチャンスはある。
そのためにはチームの顔が休まずに引っ張ること。野手は坂本、岡本の生え抜きの2人。坂本はここ数年、試合を休むことが増えた。そうなると選手寿命は先が見えてくる。本人にしか痛みや苦しみがわからないのは承知の上やけど、少々の故障なら試合に出ながら治すぐらいの気持ちでやってほしい。いまだに巨人は坂本のチームなんやから。
そして、岡本はもっとリーダーシップが欲しい。坂本のチームから、岡本のチームに変えていかんと。胸に秘めたものはあるんやろうけど、もっと感情表現したほうがいい。厳しい言い方になるけど、ヤクルトの村上との4番の差も、今の順位につながっている。コロナから帰ってきたら、目の色を変えてセ・リーグを盛り上げてほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。