今年の夏の甲子園大会は、ドラフト会議に大きな影響をもたらしそうだ。注目は163キロ右腕・佐々木朗希だが、彼が通学する大船渡高校は甲子園の常連校でもなければ、野球強豪校でもない。よって、「岩手県大会にスカウトが集結する」との見方が強まっている。
しかし、そんな状況がドラフト史上初の快挙を呼びそうだ。これまで、史上最多の入札数は1989年、野茂英雄氏に集中した8球団。それを上回る可能性が出てきたのだ。
「大船渡高野球部では、佐々木だけを特別扱いすることはしません。また佐々木に対し、直球一本で押すだけのピッチングは絶対にさせず、低めに丁寧に変化球を集める投球を教えています」(アマチュア担当記者)
目先の勝利よりも人を育てる大船渡高野球部の方針に、12球団スカウトは佐々木に対して大きな伸びしろを感じているという。野球強豪校ではないため、炎天下の甲子園大会で酷使される可能性も少ない。
「佐々木は地元意識が強い。中学は学校の軟式野球部でしたが、外野を守っていて、センターゴロを記録したなんて逸話もあり、全国の強豪校からの勧誘も受けていたんですが、『地元で頑張れば、甲子園に行けることを証明したい』と全て辞退しました。プロ志望も強く、指名された球団に尽くすタイプになりそう」(同前)
今秋のドラフト候補には、好投手が多い。佐々木の抽選に外れても、例年の指名重複レベルの投手が多く残っているというのも、“野茂越え”の声を強めている。
「巨人は菅野が勤続疲労、阪神は藤浪が復調するのか分からない状態です。一方、DeNAの筒香、広島の菊池、ソフトバンクの千賀と、今オフ、入札によるメジャー挑戦が伝えられている選手はチームの看板ばかり。楽天も五輪イヤーのオフに則本の米球界挑戦が囁かれており、どの球団もお客の呼べるスター候補に飢えています」(プロ野球解説者)
大船渡高が岩手県大会で敗れた場合、「消耗しないで済んだ」と解釈され、夏の甲子園にコマを進めれば、その知名度は揺るぎないものとなる。今オフ、佐々木は史上初の12球団1位指名の快挙達成となるのか。これから始まる夏の甲子園予選は、その序章となりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)