「吉田拓郎と井上陽水」それぞれの引き際(6)シャウトする拓郎は永遠

「つま恋」「フォーライフ設立」「テレビへの不出演」‥‥音楽界に数々の足跡を残してきた拓郎だが、「単独コンサートツアー」でも元祖であり、功績を称賛されている。

 拓郎とは同じ事務所だった山田パンダ氏は言う。

「ユイ音楽工房の壁に貼ってある拓郎のツアースケジュールを見ると、全国津々浦々のホールを回っている。『スゲぇ、日本のボブ・ディランだ』と感心した。ハープを吹いて、アコギをかき鳴らし、会場の客を独特な喋りで沸かすステージが大好きでね。かぐや姫もずいぶんジョイントしたけど、自分たちの出番が終わるとステージの袖でずっと拓郎を聴いていた」

 音楽だけにとどまらない、伝説的スーパースターだったと評するのが富澤氏だ。

「拓郎の『結婚しようよ』があって、フォークソングが若者たちにメジャーな音楽になった。『僕の髪が肩までのびて〜』と歌ったと思ったら、本当に結婚してしまった。この曲で白い上下のスーツ姿で教会結婚式をする若者が増えた。そう考えると、後に松任谷由実が若者の流行を先取りしたが、その前は拓郎だったということになる。あの時代、拓郎は『お前たち、好きなように生きるんだよ』と生き方を教えてくれたんだと思う」

 数々の偉業の足跡をたどっていると「今でも現役だ」と思わせる朗報が届いた。6月29日に発売された「ah-面白かった」がいきなりオリコン2位を獲得。実に「TAKURO TOUR 1979」以来の42年ぶりの快挙だという。

「自分のことのように嬉しい。拓郎におめでとうと言いたい。年内活動終了は今でも信じられない。むしろ信じたくない。ステージで躍動し、シャウトする拓郎は永遠です」(山田氏)

 それでも、拓郎は7月21日放送の「LOVELOVEあいしてる最終回・拓郎卒業SP」(フジテレビ系)でテレビ出演のフィナーレを飾ることを発表している。

「幕の引き方の見せ方は拓郎の方がドラマティック。『もうここまで』と思ったらあっさり終了を宣言する。一方、陽水は好きなことをやってここまで来た人なので、上手い終わり方を見つけられず、このまま雲隠れした状態になってしまうのかも」(宝泉氏)

 それでも、最後に富澤氏は陽水のラストに期待する。

「さすがにこれまで不出場を通した紅白出場はないでしょう。70年代からのファンとしてはこれだけ盛り上げてきた責任をとってほしいですね。ライブがムリでも曲は作っているはずです。陽水の歌で辞世の句を残し、最後にアルバムは出してほしいと思います」

 常に時代の先頭に立ち青春を歌い続けた拓郎、カメレオンのように姿を変え、時代の心情を切り取って来た陽水。2人の長い旅はまもなく終着地へたどり着く。それでも名曲の数々は永遠に生き続けるだろう。

*「週刊アサヒ芸能」7月21日号より

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