EUの喉元に突き刺さるロシアの飛び地・カリーニングラードの脅威とは?

 陸続きなのに離れた場所に同じ国や行政区域が存在する「飛び地」。ロシアにもポーランドとバルト三国のリトアニアに囲まれた「カリーニングラード州」と呼ばれる飛び地がある。

 面積は四国よりひと回り小さく、人口は約100万人。その4割弱が州都カリーニングラードに集中している。バルト海に面したこの街はハンザ同盟の貿易都市として中世から栄え、第二次大戦後はソ連領に編入。冬場でも港が凍らないので海軍の軍港が築かれ、今も戦略上の重要拠点となっている。冷戦時代はソ連国民も他の地域に住む者は立ち入りが禁止されていたほどで、現在も軍事施設が集まっている。

「ここには核兵器の搭載も可能な地上発射型ミサイルシステム『イスカンデル』や大陸弾道ミサイルの『サルマト』も配備されています。欧州主要都市に最短数分で着弾させることが可能で、EU各国にとっては喉元にナイフを突きつけられた状態といっても過言ではありません。結果的にロシアに対して慎重にならざるを得ず、ウクライナへの支援が限定的になっている要因のひとつです」(全国紙記者)

 現地には復元されたものも含めて歴史的建造物が数多くあり、街並みはソビエト時代の雰囲気を残している。ただし、その一方で経済特区にも指定されており、ウクライナへの軍事侵攻開始時点で140を超す外国企業が進出していた。

「ロシア随一の工業地帯で失業者の少ない地域でしたが、戦争開始後は外国企業の規模縮小や休業などが相次ぎ、厳しい経済制裁で輸出もできなくなりました。このまま同州の景気が悪化すれば、ロシア全土に波及するのは間違いありません。追い詰められて暴挙に出る可能性も否定できず、欧州各国が現地のロシア軍の動きを警戒しています」(同)

 フィンランドとスウェーデンの2ヶ国がNATO加盟を正式表明してからはさらに緊張感が高まったカリーニングラード。今後はこちらの情勢にも注意したほうがよさそうだ。

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