まもなく、夏の甲子園大会の予選が始まる。神奈川県が6月8日に口火を切って抽選会を行うが、今夏のキーワードは「敵は内にアリ」になりそうだ。
「コロナ対策として、大会中に感染した選手、感染が疑われる選手が出た場合、スタンドで応援する選手との入れ替え(登録の変更)を認めることになりました。それも、試合開始前までOKです」(学生野球担当記者)
“大英断”と言っていいだろう。
今年のセンバツ大会中、広島商から感染者が出てしまい、対戦予定だった大阪桐蔭は不戦勝扱いになった。広島商側はもちろん、のちに優勝旗を掴んだ大阪桐蔭サイドからも「広島商のために」の声が、決勝戦が行われた日まで続いていた。
高野連には日本中から「何とかならないのか?」と、やむを得ずにコロナ感染者を出してしまった学校への配慮、そして救済措置を求める声が多く寄せられていた。今回の選手入れ替え案は不戦敗を防ぐ良策となりそうだ。
「地区予選大会での施策となりますが、不戦敗を防ぐ効果が見られれば、甲子園本大会での採用も検討されると思います」(同)
しかし、予選大会中の練習方法が難しくなりそうだ。夏の全国選手権大会は3年生にとって最後の公式試合となる。その後、国体に進む一部の高校はともかく、3年生は予選大会でベンチ入りできなかった時点で“事実上の卒部”となり、練習のサポート役にまわる。かわいそうではあるが、地方大会直前から20人のベンチ入りメンバーのみがグラウンドに出て、追い込み練習と調整を行う。
「この少数精鋭となった追い込み練習がレベルアップにつながっていくんです」(関係者)
「コロナ感染者、濃厚接触者の発生」を考えた場合、どうなるのか。各学校の監督、コーチたちは精鋭に絞り込んでの練習ができなくなる。万が一に備え、10人前後の予備選手を作り、練習に参加させなければならないだろう。
「また、感染していったん登録から外れた選手が回復した場合、緊急登録された選手と入れ替えという形でのみ、再登録できます」(前出・学生野球担当記者)
スタンドでの応援にまわった球児の中には「ひょっとしたら?」と期待を抱く選手もいるだろう。ことによっては、チーム内にミョ〜なライバル心が生じるかもしれない。今回の「withコロナ」対策がチームの結束力に影響を与えなければ良いのだが…。
(スポーツライター・飯山満)