中国では西側諸国で流通しているアプリの使用が禁止されていて、対話アプリはウィーチャット、SNSはウェイボー、検索サイトではバイドゥといった、国産アプリがこれの代替として使われているのはもはや常識。そのため中国のネット環境は、グレートファイアウォールの大きな壁で守られ、これを維持するために膨大な人数による検閲が行われていて自由な発言は行えず……といった閉鎖的なネット環境にあるのも誰もが知るところ。そして現在、ロシアが中国を模範としつつ、自国内で完結するネット環境に移行しつつあり、ユーザーの国産アプリへの“引っ越し”が相次いでいる。
「YouTubeの代わりは『RuTube』、フェイスブックの代わり『VKontakte』といったように、 ロシア国内にも西側諸国で流通するSNSアプリを代替するアプリがあります。他にもツイッターは『Odnokassniki』、インスタは『Fiesta』などがあって、最近でもインスタ類似の『Rossgram』がリリースされています。そしてロシアがウクライナ侵攻後に西側のSNSへのアクセスを制限したことから、こういったアプリに乗り換える人が急増しているのです。ロシアではこれらを運営するIT企業には税制の優遇があって、社員は兵役も免除されています。ちなみにRuTubeの母体はロシア最大のガス会社であるガスプロムです」(週刊誌記者)
西側のSNSを排除して、国産モノに人々が流れれば第一段階完了といったところか。そうすれば自然とSNS内はロシア国内で完結した情報に偏るようになり、加えて3月4日に成立させた、ロシア軍に関して当局がフェイクニュースと判断した報道や情報発信には「最大禁錮15年」という刑法を暴力装置として働かせれば、雑音はなくなる。
プーチンはウクライナに侵攻するかなり以前から、現在におけるような情報統制への道を1歩ずつ固めてきていた。
「16年にはヤロヴァヤ法という法律を成立させましたが、これはロシアの電気通信事業会社に、電話やテキストメッセージ、その他の通信を最大6カ月間保存しておくことを義務付け、当局はこれに簡単にアクセスできるというものです。つまり通信の中身を当局がのぞき見ることが可能になったわけで、ジョージ・オーウェルのSF小説『1984』に出てくる監視社会のトップに君臨するビッグブラザーを模して、ビッグブラザー法とも呼ばれています。つまり中国と同じくグレートファイアウォールを目指したもので、その実現には人的・技術的に中国が協力したと言われています」(同)
さらに19年には、もしロシアが外部から攻め込まれた時、当局がネットを遮断できるという法律も成立させていて、そのための技術的テストも行ったという。だから、現在ロシアで起こっていることは、これら情報統制施策が実施されているということになる。異なるのは、ロシアが攻められたのではなく、攻め込む側だったということだ。
(猫間滋)