トラの救世主? マルテ代役の昇格新人はタダの数合わせではない!

 トラの救世主は“原辰徳監督もよく知るオトコ”かもしれない。開幕8連敗のセ・リーグワースト記録を更新した4月2日の巨人戦後、阪神・矢野燿大監督はドラフト6位ルーキーの豊田寛外野手の一軍昇格を明言した。

「前日に途中交代したジェフリー・マルテの右足負傷がちょっと長引きそうです。豊田は大学、社会人・日立製作所を経てのプロ入りです。今季25歳という年齢からも分かる通り、球団も即戦力と見込んで指名しました」(在阪記者)

 その豊田が低迷するチームに新しい風を吹き込んでくれそうだ。

「3日は5回表に代打起用されましたが、三振でした。でも、空振り三振であり、中途半端にバットにボールを当てようとせず、思い切りの良さを感じました」(球界関係者)

 豊田は東海大相模高、東海大グループの国際武道大学、日立製作所と“野球エリート街道”を歩んできた。高校時代の同級生には中日・小笠原、オリックス・吉田凌がいて、全国制覇も経験している。しかし、“4番・豊田”は夏の甲子園大会にコマを進めた途端、打てなくなり、4番の責務を果たせたのはチームが準決勝、決勝戦に進出してからだった。

「適応力にやや乏しいのかもしれません。マジメなので考え込んでしまうタイプでもあり、でも一人で居残り練習をするなど努力で現状を打破してきました」

 当時を知る関係者がそう言う。

 大学、社会人に進んでからもそんな試練が続いた。エリート街道でもがき続け、そこで培われたのは、どんな劣勢にあっても諦めないメンタル力だ。

「国際武道大学の岩井美樹監督は、原辰徳監督にとって兄貴分のような存在。オフシーズンに同校で学生相手に講演をしてきたのもその関係からでした。当然、豊田がどんな選手なのかも聞かされていました」(前出・関係者)

 その豊田の努力と諦めない姿勢が、いつの間にかチームをまとめ、戦う集団に変えていったという。

 プロ初打席で三振を喫した豊田は、すぐに素振り室に行き、バットを振った。

 相手チームが得点のチャンスを迎えるたびに、阪神ナインは「今日もまたダメか?」と不安そうな表情を浮かべる。まずはこの雰囲気を一変しなければならない。豊田が瀕死のトラも救ってくれたら…。

(スポーツライター・飯山満)

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