韓国新大統領就任に、世界のBTSファンが熱視線を送る理由とは?

 現職の文在寅大統領に代わって、5月から韓国の新大統領となる尹錫悦氏。3月に行われた大統領選では夫人の経歴詐称問題など、すったもんだはあったものの、文政権における不動産政策失敗や新型コロナ対処不足による反動もあり、国内では新大統領誕生を歓迎するムードが高まっているという。

 そんな中でも最大限に新大統領就任に熱い期待を寄せているのが、韓国の7人組男性ヒップホップグループ「BTS」の熱狂的ファンとして知られる、”ARMY”たちだという。

 ARMY(軍隊)には、防弾チョッキをBTSの正式名である『防弾少年団』に例え、「BTSとファン達はいつも一緒」という意味が込められているが、

「『防弾少年団』というグループ名には『若者に向けられる社会的偏見や抑圧(という名の弾丸)を防ぎ、自分たちの立場、考え方を明確に発信する』というコンセプトがあり、そうしたことから彼らに共感するARMYたちも、政治活動への参加に積極的です。アメリカで起こったBlack Lives Matterの人種差別抗議運動の際にはARMYたちが支援を表明、1日もかからず100万ドルを集めて注目を浴びました。また、アメリカ大統領選挙ではトランプ大統領を支持しないよう呼びかけ、演説会場への参加者を激減させトランプ陣営に大きな打撃を与えたとも報じられました」(韓国エンタメライター)

 とはいえ、そんなARMYたちでも手が出せなったのが、韓国の兵役問題だ。韓国では18〜29歳の男性に最低でも1年半の兵役義務が課されているため、アイドルグループにとって人気絶頂時に兵役でメンバーを欠くことは、グループ存続にも大きなダメージになる。

「今年12月にはメンバーのひとり、JINが30歳を迎えるため、入隊しなければならないのですが、この兵役義務にはスポーツや芸術分野で国際的に顕著な成績を残した場合、免除されるという特例があります。BTSは『Dynamite』で2020年に米ビルボード100で1位を獲得。その経済効果は1兆7000億ウォン(約1660億円)とされ、今の人気が維持されれば、デビュー(2013年)から2023年までの10年間で、経済効果は56兆ウォン(約5兆4000億円)にのぼるとの試算もあります。そのため、オリンピックでメダルを取った選手などに限られていた兵役免除の対象を、大衆文化芸術の貢献者にまで拡大すべき、という審議が昨年、韓国国会でも行われたのですが、反対意見もあり結局保留となったんです。それだけにARMYとしては、政権交代をきっかけに、兵役免除が再度検討されるのでは、という期待に胸を膨らませているようです」(同)

 新政権により、兵役法が改正され「免除」に至らぬまでも「代替服務」が認められれば、自身の特技分野で一定時間(500時間超)の奉仕活動することも可能になるというが、ともあれ、今や世界中から注視されるBTSの兵役問題。5月10日、新大統領に就任する尹錫悦氏の言動に注目が集まっている。

(灯倫太郎)

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