ロシアによるウクライナ侵攻が激化する中、この国による暴挙も止まらないようだ。
24日午後2時半すぎ、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射。ミサイルは午後3時44分ごろ、北海道の渡島半島の西、約150kmの日本海に落下。ただ、今回は飛翔時間が過去最長のおよそ71分間だったこと、さらに、少しズレれば北海道を直撃していた可能性もあることから、G7出席のためベルギーに到着した岸田総理も「許せない暴挙であり、断固として非難する」と怒りをあらわにして強い懸念を示した。
北朝鮮事情に詳しいジャーナリストが解説する。
「西側諸国の目がウクライナ侵攻に向いている中、北朝鮮がミサイル発射を繰り返す理由はずばり、『ロシアの次は我々だということを忘れるな』という警告です。トランプ前大統領時代、関係修復に光が見えた米朝関係も、バイデン氏になってからはほぼ膠着状態が続いている。だからこそ、北朝鮮はミサイル発射を続けていくことで自国をアピールせざるを得ないんです。加えて、4月には金日成主席の生誕110年という祝賀を控え、なんとしても式典を盛り上げたい。今回の発射もその一環と考えていいでしょう」
「我々を忘れるな」「お祭りを盛り上げるための演出」…それが事実だとしたら迷惑この上ない話だが、そんな北朝鮮がここへきてロシアと急接近しているというのだ。
「というのもロシアは今、ウクライナ侵攻による経済制裁でルーブルが急落。さらに自国へのドル送金ができなくなったことで、ロシアに見切りをつけ、国外へ脱出する中央アジアからの移民労働者が後を絶たないんです。これまでロシア経済を支えてきたのは、そういった移民労働者ですから、いわば彼らはロシア経済の生命線。そうした事情からロシア国内では、北朝鮮への制裁を解除し、北朝鮮労働者の雇用を促進させようとする動きが出はじめているようです」(同)
地元メディアによれば、ロシアの沿海地方では建設業界を中心に、北朝鮮労働者の入国制裁解除をロシア政府に求める動きが広がっているという。
「北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻に対し『根元は全面的にアメリカと西側の覇権主義政策にある』として完全にロシア側に付いていて、プーチン大統領と金正恩総書記の関係も良好だと言われます。ただ一点、プーチン氏は北朝鮮の“核保有には反対”の姿勢で、国連安保理でおこなわれた北朝鮮への過去10回の制裁決議には、ロシアも賛成しています。つまり、ミサイル発射には目をつぶるが核実験は許さないぞ、ということ。しかし北朝鮮としては、ウクライナがロシアやイギリス、アメリカの説得に応じて核を放棄し、そのあとロシアに侵攻された姿を見たことで、間違っても“核を手放そう”とは考えないはずです。ただ、ロシアとしては、経済維持のためには賃金が安く、仕事が丁寧とされる北朝鮮の労働力は捨てがたい存在。つまり、プーチンと金正恩がどう折り合いをつけていくかが、両国の今後を左右することになるでしょう」(同)
朝鮮戦争(1950〜53年)で荒廃した北朝鮮の国土復興に、ロシアが力を貸したことから始まったとされる両国関係だが、ウクライナ侵攻をめぐるさらなる急接近に、隣国として不安を憶えずにはいられない。
(灯倫太郎)