北朝鮮が「金欠」で大使館を続々閉鎖 それでも金一族のブランド品あさりは拡大中

 2023年現在、世界の159の国々と外交関係があり、53の在外公館を構えるとされる北朝鮮。ところが先月30日、アフリカのアンゴラとウガンダの北朝鮮大使館が閉鎖されたと現地メディアが報道。北朝鮮の国営朝鮮中央通信もそれを裏付ける報道を行った。

 さらに翌31日に香港領事館の閉鎖、11月1日には在スペイン大使館の廃止と、在外公館撤退のニュースが連日報じられ、この状況について韓国統一省は「伝統的な友好国と最低限の外交関係を維持することも困難になった北朝鮮の厳しい経済事情を物語っている」という見解を示した。

 確かにここ数年は、地方だけでなく都市部でも、食糧難による餓死者が続出していると言われる北朝鮮。ところがいまだに金一族のためには、莫大な額の贅沢品が密輸されているというから驚きだ。韓国在住のジャーナリストが説明する。

「韓国統一省によれば、北朝鮮への密輸が確認されているものは、クルマ、貴金属、時計、バッグのほか、日本の有名調味料など数十品目に及ぶのだとか。もちろん、北朝鮮へ贅沢品を送ることは国連安保理の制裁違反に当たる行為ですが、年間数十億円にも上る贅沢品が密かに輸入され、そのうち数億円分が金一族のものだという情報もあります」

 こうした中には、金正恩総書記がロシア訪問時に着けていたスイスIWC社製の時計(176万円相当)、妹の金与正氏が愛用するクリスチャン・ディオール社製のバッグ(100万円相当)、娘のジュエ氏が羽織る同じくディオールのコート(25万円相当)なども含まれていたのだろう。

 統一省によれば、それら金一族が使用する贅沢品の調達を担当するのが「39号室」という外貨獲得のための専門部署だという。
 
「朝鮮労働党39号室は“金一族の金庫番”とも呼ばれ、貿易を取り仕切り、外国でレストランなどを運営するほか、ロイヤルファミリーの贅沢品を買い揃える役割も担っているとされます。本国から指定された物品を欧州の在外公館や商社員に指示を出して入手すると、何カ所も経由させて、トレースできないようにして密輸する。国境を封鎖したコロナ下でも、貨物船を使って運び込んでいたと見られています」(同)

 中朝貿易が再開した昨年からは、贅沢品の密輸入も拡大しているという。国民の食料よりも核開発や一族のプライドを優先する金総書記。大使館を閉鎖しても、ブランド品あさりは続きそうだ。

(灯倫太郎)

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