いよいよプロ野球が開幕する。我々、解説者の頭を悩ませるのが順位予想。今年は特に難しい。去年は両リーグとも前年最下位のヤクルトとオリックスが優勝した。今年もどこが優勝してもおかしくない。悩んだ末に出した答えは、セ・リーグは阪神、パ・リーグはオリックス。今年こそ日本シリーズ関西決戦を期待したい。
阪神は矢野監督が今年で辞めるとかそんなこと関係なしに、2005年以来の優勝に向けた大チャンス。今シーズンは9回打ち切りではなく延長12回まで戦うので、投手力が去年以上に重要視される。セの各チームを見渡すと、阪神の先発投手層の厚さは群を抜いている。高橋は故障で出遅れているけど、青柳、西、秋山、伊藤、ガンケルとスラスラ名前が出てきて、ここに藤浪も入ってくる。別に藤浪が活躍できなくても、ローテの5、6番手で投げる投手は他にもいる。
懸念材料は4年連続で12球団最多失策の守備力だが、今年も目に見えた改善はない。主力にいろんなところを守らせすぎるのも、チームの守備が落ち着かない原因のひとつ。オープン戦で大山は三塁、一塁、左翼を守り、佐藤輝も三塁、右翼に加えて二塁まで守った。二塁の守備は緊急時の備えというけど、本来、オープン戦は連携など精度を高める時期。間のボールはどちらが捕るとか、同じ顔ぶれで守ってこそ、プレーの質は高まってくる。
もし、僕がグルグルと守備位置を変えられたら「落ち着いて守らせてください」と申し出る。実際に晩年にレフトを守るように言われた時は「それならベンチでいいです」と伝えた。センターの守備は自信があったけど、レフトは打球の角度も変わるし、自信がなかった。大山や佐藤輝も守備を固定してあげたほうが打撃にもいい影響を与えると思うけどな。
対抗馬は戦力的に見て巨人と思っていたけど、オープン戦では他球団になめられるほどの弱さやった。松原や吉川らレギュラー一歩手前の選手らがアピール不足で、チーム全体に活気がなさすぎる。若手投手は何人か活きのいいのが出てきたけど、やらなアカン立場の戸郷や高橋らが精彩を欠いていた。エースの菅野もピリッとしない。昔はオープン戦といえど、他球団は巨人のユニホームに気圧されたもんやけど、今はまったくそんな雰囲気を感じない。ヘタすると、Bクラスに沈む可能性もある。
昨年の覇者のヤクルトも燃え尽き症候群的な感じがあるな。投手陣も無理したところがあるし、どこまでリフレッシュして戦えるか。DeNAは打線はいいけど投手力が今ひとつ。広島、中日も優勝を狙うには物足りない。残るは、やっぱり阪神となる。
パ・リーグはセ以上に力が接近しているけど、オリックスは連覇の可能性が十分にある。山本由伸、宮城の先発2本柱がしっかりしているし、去年は故障でほとんど活躍できなかった山岡も復帰する。打者でもラオウ杉本がオープン戦で去年の活躍がまぐれでないことを見せている。巨人と違って、1軍半クラスの若手のサバイバル競争も激しさを増している。
それと、パの見どころは優勝を目指さないと宣言しているビッグボス新庄の日本ハム。攻撃でも守備でもいろいろ仕掛けてきそうで、楽しみでしかない。今年もワクワク、ドキドキの時間が始まるわ。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。